狐嵐帝記 貴方は誰 取り敢えず泣き止むと、その青年は離れてくれた。 間近で見ても、本当男か疑わしい位線が細い。 「突然抱き着いて、びっくりしたでしょう。すみません」 「あ、いえ、あの、貴方は」 「・・・私は、貴方の兄です」 「新手の詐欺かい?」 返事したのは、朴都ではなく、今しがた帰って来たばかりと思しき、朴都の兄である。 今は、眉根に皺を寄せ、酷く警戒するような目をしている。 「詐欺などではありません。私は、この子の三番目の兄です」 「朴都は、小さい頃に私が拾ってからずっと、私と生活してきた。兄が居た?初耳だね」 「失礼ですが、貴方何者ですか?もしや、謀っているのではないでしょうね」 「その台詞、そっくりそのままお返しするよ」 バチッ、と二人が火花を散らす。が、朴都が割って入った。 「待って!どういう事か、きちんと説明して。あと、俺は朴都でこっちがお兄の嶐伽ね」 朴都が慌てて、困った顔で割って入ったのを見て、二人ははっと我に帰り、同時に目を逸らした。 「この国、『唐國』が王政国家である事は知っていますか?」 朴都が頷くと、少しばかり安心したらしい、青年は続けた。 「申し遅れました。私は、『唐國』王家の第三子、白欺といいます」 そう言って、白欺が取り出した通行手形には、王家紋様『四神榊』が彫り込まれていた―――――。 [*前へ][次へ#] [戻る] |