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Glare






さて、少し時間は経って日付も替わろうかと言う時間帯。

暗い夜道を荒い息で走る幸村が居た。

幸村は時間帯の為か一人として人の居ない夜道を、一人で爆走中である。

普段の幸村ならば、こんな時間に外出等は言語道断。

勿論夜道を一人爆走なんかもしない。

しかし今の幸村はそんな判断が出来ない程に焦っていた。



(───…政宗、殿…!)



…理由は言うまでも無いだろうが一応言っておくと、政宗が関係しているからである。




















*********



(───…返信…!)



政宗からの返信メールは、直ぐにとはいかなくともかなり早めに返ってきた。

その事に若干嬉しくなり更に挙動不審になった幸村は、次の瞬間夜だと言う事も忘れ。

























「は、破廉恥でござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

























叫んだ。

別に政宗からの返信が破廉恥な訳では無い。




















“あのな、幸村…

急で悪ィんだが、これから、会えねぇか?”




















…このメールを見て、破廉恥と叫ぶ幸村の頭の中の方が破廉恥である。

その事を分かっているのか居ないのか、顔を真っ赤にした幸村は大声で叫びはしないものの、幸村の頭の中ではどんな妄想が繰り広げられているのか、小さく破廉恥破廉恥破廉恥…!と呟いていた。



(こ、こここここここんな時間に政宗殿とお会いするなど…!それに、もうかなり遅い…。父上が許してくれるかどうか…。しかし政宗殿にはお会いした、い………はっ!俺は…!俺は何て破廉恥な事を…っ!)



幸村の中では会うだけで破廉恥なのかはたまた幸村の妄想が破廉恥なのか。

寧ろどうやってもその思考に辿り着く幸村の頭が一番破廉恥ではなかろうか。

と。

そんな事には気付かない幸村の部屋が小さくノックされ、部屋のドアが開かれる。



「こら幸村!こんな真夜中に叫ぶのは止めなさい。近所迷惑だろう?」

「はれ…っ!





…ち、父上っ!?す、すみませぬっ!」



暫く妄想の方に気をとられていた幸村であったが、五拍の後、漸く気付いたらしい。

小さく叫び声をあげ、それから直ぐ様謝った。



「ち、父上、騒がしくしてしまって申し訳ありませんっ!」

「私にとっては我が子が元気なのは嬉しい限りだよ、幸村。ただ夜中に叫ぶのは止めなさい、ね?」

「は、はいっ!」



にこりと微笑む父、昌幸の言葉にこくこくと素早く頷き、其処で納得した様に部屋を出ようとした昌幸を、幸村は咄嗟に呼び止める。



「…ち、父上っ!」

「ん?どうしたんだい?」

「そ、その…。これから、出掛けても構いませぬか?」

「………これから、かい?」



昌幸の疑問に幸村が小さく頷くと、うーん…と困った様に声を出す昌幸。



「それは…、今すぐ行かなければいけない所なのかい?」

「恐らくは…」

「うーん…」



少し顔を顰めながら唸る昌幸を、縋る様な眼差しで幸村は見る。

そんな我が子の様子に気付いた父は、我が子に気付かれない様に一つ溜め息をつき、そして優しく微笑んだ。



「…分かったよ幸村。よっぽど大切な用なんだろう?行っておいで」

「父上…!ありがとうございますっ!」

「但し!幾ら幸村が男の子でそれなりに強いとはいえ、今の時間帯は危険なんだから出来るだけ早くに帰って来るんだよ?分かったかい?」

「っはい!」



元気よく昌幸の言葉に返事をし、そして素早く政宗に大丈夫だという旨のメールを送れば、返事が直ぐに返って来た。

























“そうか…

悪ィ、Thank you.

…じゃあ、別れ道んとこに居るから”

























(別れ道に、居る…?
という事は、政宗殿はもう其処におられるのか!?)



何故だ、と考えるより先に、長く待たせてはいけないと幸村は昌幸へ行って来ます!と叫び、全速力で走りだす。

此処から政宗が待っているという道───前に一度だけ、二人きりで帰った時に別れた道である───へは、普通に歩けば十分程の道のりである。



(急がなければ…!)



これから政宗と会うというので早くなる鼓動を感じながら、幸村は夜の道を一人駆け抜けた。




































「幸村ー?自転車の鍵忘れて…って、居ない?…まさか走ってったのか…。若いなぁ…」



勿論そんな父の声は、子供には届かなかった。



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