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Glare




(…つ、疲れた…)



時刻は只今午後十一時半。

結局───、HRどころか帰宅している途中の通学路、更には家に帰ってから今迄の間、ずっと幸村は質問攻めを続けられていた。

通学路では何度否定しても質問され、帰って来てからは電話、呆れた幸村が電話を無視すればメール───等々、周りからのかなりのしつこい追求に幸村は疲れ果てていた。

そしてつい先程。

何とか電話とメールを繰り返す元親、慶次、佐助に想い人は居ないと信じさせる事に成功した幸村は、一人、自室のベッドで横になっていた。



(───…それにしても、しつこかった…)



若干黒い感情を感じつつ、ふぅとため息を一つ。

幸村はゆっくりとベッドから起き上がると、机の上にあった携帯の充電器を手に取り、それをコンセントへ差し込んだ。

そのまま携帯を持ち、ベッドの上に再度横になり、意味もなく携帯をいじってみる。



(───…眠、い…)



精神的に疲れたからであろうか。

何時もより早く襲って来た眠気に、うとうとと幸村は微睡み始める。



(───…今日は、宿題も無いし…、予習はしてあるし…。眠っても、大丈夫だろうか…?)



必死に頭の中で遣るべき事を思い出し、そしてそれは全て終わっている事に気付く。



(…寝、よう…)



ぱたり、と携帯を閉じ、布団を被り本格的に寝ようと目を閉じたその時だった。

メールを報せるバイブ音が、静かだった部屋に響き渡ったのだ。



(…?もうあの三人は何とかなったし…。迷惑メールか何かだろうか…?)



そうだったら迷惑以外の何物でも無い。

迷惑メールだったら着信拒否しておこう───そう思いながら、自然に下がって来る瞼に何とか堪えながら、素早くメールの送信元を確認する。















「…迷惑メールか…」















はぁ、と深い溜め息が出た。

背が伸びるサプリメントやら女子に人気が出る香水やら、余りにも幼稚過ぎるだろうとしか思えない程の内容。

完全に、迷惑メールである。

迷惑メールにしたって時間を選んで欲しい。

安眠を妨げられ少し苛立ちを感じながらも、そのアドレスを直ぐに着信拒否にした。



『このアドレスを着信拒否アドレスとして登録しました』



そう記された画面を見つめながら、もう一度溜め息をつく。



(───…次起こされたら電源を切って眠ろう…)



今度こそ、と固く瞳を閉じる。















───しかし。

今度も、携帯が幸村を素直に眠らせてはくれなかった。



(───…何故今日はこんなにメールが多いのだ…)



溜め息は出なかった。

ゆっくりと起き上がり、ただ眠りたいと繰り返す頭を覚醒させようとする。

見慣れた携帯を開き、機械的にメールの送信元をチェックして、










…其処で、幸村の意識は完全に覚醒した。




















“夜遅くに悪い

今、大丈夫か?”



「ま、さむねどの…?」

























送信元を見れば、其処には確かに“伊達政宗”と言う名前が記されている。



(ど、どうしたのだろうか…?)



幸村が一方的に政宗を避けている節が有るからか。

幸村と政宗は、余り電話やメールと言う物をしなかった。

たまにしたと思えば、必要最低限の事だけである。

内容は何時も通り簡素な物だったが、幸村がメールが来ただけで何かあったのだろうかと心配になるのは、不思議な事では無かった。



(政宗殿からのメール、久しぶりだ…。───…ではなくて!ど、どうすれば…!?と、取り敢えず返信を…!)



突然の政宗からのメールに幸村は嬉しいやら焦るやら驚いたやらで軽くパニック状態だ。

必死で冷静に冷静にと口に出しながらメールを返信する幸村だが、壊れた様に冷静にと繰り返す様子はとても冷静になっている様には思えなかった。















“全然大丈夫でござる!

どうかしましたか?”















この簡潔極まりない二行を考える為に悩んだ五分程、そして政宗から返信が返って来る迄の数分間。

幸村は、どう頑張っても冷静で居られる訳が無く。

幸村は、一時的に、誰がどう見てもただの挙動不審人物になって居たのであった。



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