Glare
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「いやぁ、楽しみだねぇ〜」
「慶次はどうせ女の子目当てでしょー?」
「佐助もだろうが」
「………」
「…お前等そんなに餓えてんのかよ…」
「は、破廉恥でござるぅぅぅぅぅぅぅ!」
桜も散り、少しずつ気温が上がり始めている五月。
この時期には、大体の学校で幾つかの一大イベントがある時期。
それは幸村が通う高校でも例外では無く、今、正にクラスはその話題で持ち切りだ。
週に一度のHRの時間。
教室の元親の席の周りに集まって、幸村達は正にそのイベントについての話合いをしていた。
…筈、なのだが。
青春真っ只中の元親達にとって、気になるのは話し合いの議題よりもこのイベントで彼女が出来るとか現地には可愛い女の子が居るとか居ないとかである。
従って、先程から真面目に議題について考えているのは、そんな話には滅法耐性の無い幸村、そしてその手の話に興味の無いらしい政宗の二人だけだった。
因みに元就は始めは話し合いに参加していたものの、元親達が他の話題に専念していたのを見て。
「…馬鹿馬鹿しい」
と一言吐き捨て、今では我関せずと読書中である。
そんな様子に遂に我慢の限界に達してしまった幸村は、声を大にしてお決まりの台詞を叫ぶ。
「うわわっ!ちょ、幸村耳元で叫ばないでよ!」
「もー、旦那うるさーいっ!」
「ほんとだぜ幸村ァ…」
幸村の叫びに、ぶーぶー、と迷惑そうにする元親達。
「す、すみませぬ…ではなくっ!今はそんな破廉恥な話をしているのでは無いでござるっ!」
そんな三人に反射的に謝ってしまった幸村は、顔を赤くしたまま今度は少し声のボリュームを下げて三人に言う。
「そ、その破廉恥な話はともかく…、取り敢えず、自由行動の計画を立てるでござる…!」
「「「えー」」」
「それに、自由行動がはっきりしない班については自由行動を無くすとお館様も仰って」
「あ、ねー此処良くない?」
「おー!良いじゃんナイス慶次!」
「馬鹿野郎!こっちのが良いだろ?な、元就は何処行きたい?」
「…知るか…!」
手の平を返したように、とは正にこの事である。
漸く真面目に話し始めた三人にふぅと幸村は安堵の息を漏らす。
「漸くだな」
隣でそう苦笑した政宗に苦笑で返し(勿論政宗を直視はしていない)つつ、幸村は元親達の話し合いに耳を傾けた。
「やっぱさー、自由時間なんだし遊びたいよねー」
「美術館とか行くって書くだけ書いて好き勝手動けば良いんじゃない?どうせ毎年皆行き当たりばったりでしょ」
「おっ!良いじゃねぇか佐助」
「でしょー?」
…少々聞き逃せない感じになってきた。
嫌な予感を感じつつ、元親に笑いかける。
「元親殿…。冗談ですよね?」
「何言ってんだよ幸村。本気に決まってんだろ?」
さも当然のように。
爽やかに笑う元親。
…顔が引きつっているのが、自分でもよく分かった。
(これは…引かないだろうな…)
笑みからそう感じた幸村は、はぁと一つ溜め息をついた。
「………。元親殿…、自由時間一杯を美術館で過ごすと言うのは些か無理のある計画だと思いますが…」
「あぁ?あー、そうだな…」
「せめて実現可能な計画を立てて頂かないと…」
「確かに旦那の言う通りだねー。どっかの記念館にでも行っとく?」
「あー、そうだなぁ…。そうすっか」
幸村の言葉にそれもそうかと頷く元親。
その様子を見ながら、はぁと溜め息をつく幸村に、にしても、と元親は言う。
「ほんっとこういうのに興味無ぇよなァ、幸村は。あ、もしかして彼女持ちなのか?」
「なっ、か、かかか、彼女っ!?そ、そんな破廉恥な!!某にはそんな方はおりませぬっ!」
…何故そんな話題になるのだっ!?
そう思いつつ、元親の言葉を幸村は必死に否定する。
「寧ろ破廉恥破廉恥言ってんのにいたらびっくりだよ?」
それは無い!と断言した佐助にそうですよ!と同意を返し、幸村は熱くなった顔を俯かせる。
(…それに…、俺は、政宗殿が、好き、なのだ…。女子と付き合う、など…)
───有り得ない。
そう、幸村がもう一度断言しようとした時だった。
「え?でも恋はしてるんだよね?」
「「えぇ!?」」
「な、慶次殿っ!?何を…っ!」
「えーだってさぁ。前言ってたじゃん!」
「某はそのような方がいると言った覚えはありませぬ!!」
「えーけどさー、」
「けども何も某にはその様な方はおりませぬっ!!」
「幸村…え、マジ?誰だ?高校同じか?どのクラスだ?」
「元親殿、ですから…っ!」
「んー、あ、学校では言えないカンジ?教師とか主婦とか?」
「テレビドラマの見すぎでござる慶次殿…!!」
「…そっかぁ。旦那も男の子だもんねぇ…。けどそんな子居るんなら教えてよねー水臭いなぁ旦那!」
「くどいぞ佐助…っ!」
一同から注がれる視線と飛んでくる言葉に、瞬時に幸村は決意した。
(金輪際、慶次殿にはこの手の話題を一切振らない…!)
しかし、今更決意したとてもう時既に遅し。
話し合いの時間の筈なHRの残りの時間、幸村への質問が止む事が無かったのは言うまでも無かった。
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