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オワリハハジマリ
別離

その時を一言で言うなら、急。

本当にそれは急だった。

何時もの様に、クラスメイトの騒がしい奴等と一緒に歩いていた時だ。

喋りながら、笑い合いながら歩いていると何処からか急に誰かの悲鳴が聞こえて、そっちを見ると赤い車が何故かピンポイントで俺に向かって突っ込んで来た。

耳に響く声。

誰かが息を飲む音。

そして誰かが走って行く足音。

次いで衝撃。

視界が目まぐるしく変わる。

状況を理解する前に、地面に叩きつけられる身体。

激痛。

最終的に仰向けで転がされた俺の視線に映ったのは、雲一つ無い真っ青な空。

視線の隅では、野次馬が寄って来たり携帯で撮られたり叫ばれたり赤い車が猛スピードで逃げている様子が映る。

ごふ、と、息をしたら血が内側から流れて口から外に出て、取り敢えず身体中が痛かった。

おい!と、近くで、クラスメイト達の声がする。





…相変らず五月蝿い奴等だ。

こっちは死にそうな位に身体中が痛いんだ、黙ってくれ。





だが口をついて出たのは、大丈夫と云う言葉。

にこりと笑う、自分。

自分ながらに何処が大丈夫なのか疑問である。

口から溢れる血に阻まれ、聞こえたのか聞こえなかったのか。

取り敢えず、クラスメイト達は何かを叫んで身体を震わせていた。

そんなクラスメイト達を確認して、意識は先程の赤い車へ。





───あぁ、全く。

ふざけるんじゃねぇあの車。

俺を目の前にして、ブレーキを踏むどころかアクセル踏みやがったな絶対。

お陰様で俺は重傷だ。身体中の何処もかしこもが痛い。

…にしても。

まさか、自分がこんな死に方をするなんて。

予想外だ。





そんな事を思っていると、段々と意識が朦朧としてきた。

あぁ、クラスメイト達の声が聞こえなくなってきた。

聞こえない、と云うよりは遠くから叫ばれている、と云った方が正しいかもしれない。

其処で、初めて実感が湧く。





…俺、死ぬんだな。





今迄の人生が頭の中で再生される。





…碌(ろく)な人生送ってないな。





そう思って笑おうとしたが、身体中が痛くて笑える様な状況じゃなかった。

すぅっと、体温が無くなっていく感覚がする。





あぁ、俺─────。

























やっと、死ぬのか。

良かった?嬉しい?安心した?

…解らない。

唯…、人に殺されて良かったと思った。

心残りはと云えばさっきの逃走車に苦情が言えない事だけだ。

どうせ殺すならもう少し痛くないやり方が良かった。

























…あぁ、完全に手足の感覚が無くなった。

恐らく、目を閉じればもう全て終わるのだろう。

…全て。

























まだ、クラスメイト達の声がする。

若干、救急車やパトカーのサイレンも聞こえた気がする。

けど、もうそろそろ痛みを我慢出来ない。

痛い。

どう考えても、この痛みから逃れる術(すべ)は一つしかない。

























…よし、死のう。


























そう思って、ゆっくりと瞼を下ろし、全ての景色と色と声と痛みに別れを告げると、瞼の裏に広がる闇に呑まれる様にして俺の意識は薄れていった。



































(さよなら世界、永遠に)







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