しょーと 僕と君との愛の形(政幸/甘々?) 世界に有りふれた言葉と行動では、 貴方へのキモチは表せないけれど。 僕と君との愛の形 「そう言えば、幸村に言われた事、ねぇよな。」 「はい?」 奥州、青葉城の私室。 今迄目の前の紙に筆を滑らせていた俺の唐突な言葉に、邪魔しないようにと少し離れて座る恋人───幸村が、ニコニコと団子を頬張りながら首を傾げた。 仕事が丁度終わったので、幸村に茶を入れてやってから、幸村に確認をとる。 「いや…、幸村に"好き"って言われた事、ねぇよな。」 「っ!?ごほっ、けほげほっ!」 「ΣWhat!?大丈夫かよ幸村!?」 急にむせた幸村にそう叫び、急いで背中をさすってやる。 「けほ…、す、すみませぬ。もう大丈夫です…。」 「全く…。驚かせんなよ幸村…。」 涙目になりながら謝る幸村の背中を最後に一度だけさすり、机の上に広がったままだった筆やら墨やらの片付けに取り掛かった。 「…き、急に政宗殿がその様な事を仰るからです…っ!」 驚かせるな、と言う言葉への返答なのか。 後ろから聞こえる、小さな声。 「いや、だってそうだろ?"好き"ってwordを言ってんのは何時も俺だ。」 「わー…?」 首をひねった幸村にwordの意味を教えてやれば、むぅと悩む幸村。 「…た、確かに"好き"と言う言葉自体を某が言った事は無い気がしますな…。」 「だろ?」 「…で、それがどうか致しましたか?」 片付けをする手を止め振り返れば、頬を朱に染めながらふいと視線を逸らされる。 もう付き合って1年以上経つのに、相変わらずの初(ウブ)さについ顔がにやけてしまう。 視線を合わせない幸村の正面に座り、小さく幸村を呼び、そしてごく自然にその唇に己のものを軽く合わせる。 「…ッ…!」 息をのみ更に紅に染まる顔を見ながら、ゆっくりと話の続きをする。 「そんなの、不公平だと思わねぇか?」 「…は?」 「…俺は、幸村が好きだ。幸村も、俺が好きだよな?」 「なっ…!…そ、某は…。き、嫌いな御人とはこの様に話は致しませぬ…。」 「Okay.それに、俺等は恋人同士だろ?なのに俺だけが"好き"っつーのは、なんか不公平だ。」 「…不公平、と言われましても…。」 ぽかんと口を開けたり、真っ赤になって言葉に詰まって俯いたり、困った表情をしたりと忙しい幸村に、頭の中にある考えが浮かぶ。 「な、幸村。"好き"って言ってみてくれよ?」 「───、っ!?そ、其の様な…、」 「…俺だって、幸村が好いてくれてんのは理解してるぜ?けど、やっぱり言って貰いてぇ。直に聞いたら、安心出来んだろ?」 「そ、それは…、そう、でござるが…、」 「それに…、コレを言うのは反則かもしんねぇが…、俺は母上の事もあるから、な…。幸村に"好き"っつって貰えば、不安にはならねぇ。」 「…!ま、政宗殿…、そんな、事を…?」 「…だから、な?幸村。"好き"、って言ってくれよ…?」 幸村を優しく抱き締め、耳元で優しく囁いて、薄く微笑みながら幸村の瞳を覗き込む。 「そ、某…、」 「な?幸村。」 赤い顔をして視線を逸らす幸村の名をもう一度呼べば、困った様に眉を潜める幸村。 「ま、政宗殿…、そ、その、笑わないで下されよ?」 何をだ、と思いつつもそれを口にはせず、優しく微笑む事で肯定を示す。 それを見て安心した様に笑ってから、幸村は小さく深呼吸をする。 「じ、実は、某、分からない、のです…。 そ、某は勿論、政宗殿の事が好きでござる! けれど、"好き"とは違うような気がして…、"好き"と言う言葉では全然足りなくて…。 "好き"よりも、もっともっと政宗殿が好きで、"愛してる"、でも足りなくて。 政宗殿と居る時は、とても嬉しくて、楽しくて、今こうして居る間も、武士の己を忘れる程に、幸せで…。 政宗殿とお会い出来ない時は、とても淋しくて、不安で、苦しくて、哀しくて…。 もう、依存と言うか、その位に政宗殿が好きで…。 けれど某は、これが初恋ですので、これをどのように言葉で表して良いか分からなかったのです。 "好き"でも"愛してる"でも足りなくて…、けれどそんな半端な心を半端なまま言葉にするのは嫌でした。 だから、今迄某から想いを伝える事は出来なくて…。 某の其の様な行動が政宗殿を不安にさせていたなど存じずに…、すみませぬ、政宗殿…。」 そう言って、きゅっと抱き付いて来た幸村の身体を抱き返し、すみませぬ、と繰り返すその背を幾度も幾度も撫でる。 幸村の温かな体温と感触、そして今話された幸村の胸の内。 其のどれもが愛しくて愛しくて、自然に抱き返す手が強まった。 「幸村…嬉しいぜ? 俺も…、確かに"好き"でも"愛してる"でも、アンタへのキモチを表すには、まだ全然足りねぇ。 けど、足りねぇからこそ、表せねぇからこそ、何度も何度も言いてぇんだ。 何度も何度も抱き締めて、Kissして…。 少しでも、其の足りねぇ"何か"が埋まるように。」 「政宗、殿…。」 「好きだぜ、幸村…。こんな有りふれた言葉じゃ全然足りねぇ位に、お前に惚れてる。」 何時の間にか泣き出していた幸村の目尻から涙を拭い、幸村に笑い掛ける。 余計に泣き始めた幸村に、何度も何度も甘い睦言を囁けば、更に涙を流して強く抱き付かれた。 「政宗殿…っ!」 自分の胸元に顔を埋めて泣く幸村に、くすりと笑い掛け、そして試しに意地悪く質問してみる。 「な、幸村、アンタはどうだ?」 「…そ、そんなの、聞かないで下されっ…!」 「Sorry…,幸村。好きだ、愛してる。もう、どうしようも無い位、アンタが好きだ。ずっと、隣に居てくれよ?幸村。」 「そ、某は…っ!例え死のうとも、生まれ変わっても、ずっと政宗殿だけを、お慕い致します…!」 「Me too…,幸村。」 貴方へのこのキモチは、 例えば"愛してる"だとか"好きだ"だとか、 そんな有りふれた言葉でも、 例えば"抱き締める"とか"口付け"だとか、 そんな温い行動でも、 絶対に、絶対に表せないけれど。 けれど、表せないからこそ、幾度も幾度も繰り返そう。 足りない"何か"を埋めるように、表せないキモチを紡ぐ口。 足りない"何か"を埋めるように、表せないキモチを伝える温もり。 足りない"何か"も、表せない言葉も、表せない温もりも。 全部全部、貴方が教えてくれた、愛の形。 僕と君との愛の形 *あとがき* お互いが好きすぎてどうしようも無い二人が書きたかったんです\(^O^)/ 思った通りになったかどうかと言うと、否。 若干気持ち悪い感じになりました(´;ω;`) 最初は佐助と小十郎バージョンも書こうかと思いましたが止めました! 長文乱文すいませんでした…orz 此処まで読んで下さった方、居たらありがとうございました(*´∀`*) 2010.1.4 白黒 [次へ#] [戻る] |