LO どうして、なんで(臨也視点) 「…何でだろうねぇ。 強いて言うなら、俺が人間を愛してるから?」 少女は再び眠ってしまったようだ。 白い肌に、長い睫毛が小さな影をつくっている。 綺麗というよりも可愛らしいと表現するのが似合う、幼さの残る顔。 「…涙?」 すうっと頬を滑り落ちる涙は、透明で透き通っていて、それがなんだかひどく美しく見えた。 「ふぅん…。」 それを指で掬ってそのまま口へと運べば、想像通りの少ししょっぱい味がした。 「…君は俺を、楽しませてくれるかな?」 僅かに唇の端を上げると、何の迷いもなく少女の荷物からケータイを取り出し、電源を入れる。 それを何台かあるパソコンの内の1つに繋ぐと、鼻歌交じりにキーボードを叩き始めた。 「---あ、新羅? さっきの子なんだけどさぁ。」 数分もすると彼の手には何個もある自分のケータイの内1台が握られており、どうやら先程と同じ相手に電話をかけているようだった。 黒いソファに腰を沈め、チェス盤の上の物を楽しげに手の中で弄りながら、彼は話を続ける。 「いや、彼女はまた寝ちゃったけど…。 病名やら、飲んでる薬やらは分かったから。」 そしていくつかの薬の名前を、パソコン画面から読み上げた。 「…うん、また黒バイにでも運ばせてよ。 え?また利用する気かって…人聞きが悪いなぁ。」 すると青年は、心底心外だ、という表情で、ひょいとチェスの駒を投げ捨てた。 「俺はただ、人間を愛してるんだよ。 愛する者は近くで観察したい、それだけさ!」 楽しそうに、楽しそうに--- そんな歪んだ笑顔が電話越しに伝わるはずはないのだが、相手が深く溜息をついたのが分かった。 「…人間の方は心底君の事が嫌いだと思うよ、臨也。」 人間観察。 どうなる、家出少女。 [*前へ] |