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長編小説




幸村:side

これは昨日の出来事………。



「ふっ!はっ!うりゃあああああっ!!」

ガキンッ、バキッ、ドカンッ!!
と次々と鍛錬用の鎧を着けた的が壊れていく。
鍛錬は毎日欠かさずに行っているが、今日は何故か身体が鈍っている気がする。

「己の鍛錬不足が故!気を引き締めよ!!」

幸村は一喝して、再び二槍を振るう。

「やっ!ほっ!どりゃああああああ!!」
「身体が鈍ってる感じすんの?」
「佐助!!」

道場の梁から話かけてきたのは、真田忍隊隊長、猿飛佐助。
幸村が幼い頃から仕えていて、兄弟のように共に育ち、そして、最も信頼を置いているうちの一人。
それ故か、いつもタメ口であり。

「程々にしときなよー?
 的もタダじゃないってのに…」
「う、うむ…」

壊した的の山を見れば、佐助が溜め息を吐く理由は明らかだ。

「それと、親方様が戻ってきてたよ!
 1月も行き先を告げずに何処行っ「誠か!
 では、早速顔を見せなければ!」

丁度1月前、信玄は部下を連れず、“出掛けてくる”とだけ書き置きして、何処かへ行ってしまった。
それは今までで初めての事だった。
半月位までは何かお考えがあるのだろう、と思っていたが、流石におかしいと思い、忍隊に探させたが、理由どころか居場所すら分からない状態だった。

親方様が…!!!!ようやくお帰りになられた!

「おおぅやぁあかあぁたああすぅあばああああああぁあ!!」

そう走り出そうとした刹那。

ドオオォオオオォォン。

大きな音を立て、道場の扉が開く。

「親方様ぁっ!
 御無事にござるか!?」

幸村は、心配、悲しみ、喜び等が混じり、興奮を隠せずに信玄に走り寄る。
が、信玄は一ミリたりとも動かない。

「親方…様?」
「ふんんんんっぬうぅっっ!!!!!」
「ぐっっっはあああああああぁあ!!」

ドカッッっという音の後に、信玄に殴られた幸村の身体は、200メートルはあるであろう道場の奥の壁に打ち付けられた。

「たっ大将!?!?」

そして、信玄は更に驚くべき行動をとった。

ドカッッ
バキッ
ガンッ
グシャッ
ズダンッ

幸村の起き上がる隙が無いような間合いで、殴り、蹴り続けた。
どの位そうされていたのだろうか。

「お…ゃかた…さ、ま………」

朦朧としてゆく意識の中。

「屑が。」

そう吐き捨てた親方様の言葉が耳に焼き付いた。





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