ぷれ☆★いす
其の五
どのクラスもホームルームを始めている様で生徒は一人もおらず、廊下はシンと静まり返っていた。時たま、出欠を取る先生の声と生徒の返事をする声が聞こえてくる。
そんな廊下を歩き、一階へと続く階段を降りていた大介だったが、途中でふと足を止めた。
わざわざ確認しに行かなくても良いのかも。
その内、他の先生から連絡が来るだろうし、秋田先生自身が来るかもしれない。
そんな考えが大介の足を止めさせた。
自分のしている事が無駄に思えてきた大介だったのだが、学級委員としての気持ちがその怠惰な気持ちを払拭し、職員室へと後押しさせた。
と言えば、格好も良いのだが、ただ学級委員としての態度を示しておかないと後で何か言われてしまうかもしれない。そんな事になっては面倒だ、という叱責から逃れたいという気持ちが強く働いたためだけからの行動なのだった。
大介は何よりも面倒な事が嫌なのだった。
そして、こんな学級委員の仕事を誰がやりたい訳も無く、学級委員を決める当初、2年A組は荒れるだけ荒れた。やい誰がやれ、かれがやれと、そんな押しつけだけで2時間。先生にも何か考えがある様できちっと決まるまで誰一人として帰そうとはしなかった。部活に遅れ様ともどんな用事があろうとも決めるまで帰さないの一点張りだった。
そして、こんな面倒臭がりの大介が基本的に面倒な仕事の多い学級委員になったのにはここに理由がある。
「このまま誰か立候補するのを待っていても拉致があかない。いつまでもこんな事をして待っているのも面倒だ」と、大介の中で学級委員が誰になるか待つよりも学級委員になった方が面倒じゃないという公式が出来上がってしまったのである。
もちろん、今こうして先生の元へ向かっている大介にはあの時、どちらの選択が正しかったのかがはっきりと分かっている。
あの時の自分は学級委員の仕事を舐めていた所もあるし、時間が経ち過ぎて苛々してしまって正確な判断を出来なかった所もある。
それでもそれは自分自身が決めた事なのだから仕方が無い。
そう思いつつも口から自然に出る「…ハァ」という深い溜め息がそれが自分自身にただ言い聞かせているだけである事を物語っていた。
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