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ぷれ☆★いす
其の三

「遅刻かぁ」

 学校の階段を一歩一歩上りながら大介は溜め息をつく。
 あれだけ、急いで結局間に合わなかった。やっぱり、あの時間に起きちゃあ間に合う訳なかったのかぁ。
 はぁ、何で寝坊なんかしたんだよ、俺……。

 そんな自己嫌悪に陥りながら大介は自分の教室のある2階へと辿り着いた。

 大介の通う大和高校は4階建ての共学校。学年により、それぞれA組からJ組まである。一クラスに40人程度の生徒が居て、その中で大介は2年A組だった。

 と、その2年A組と大介の距離はどんどん縮まって行く。そして、大介は教室のドアの前へと辿り着いた。

「ふぅ…、よし!」

 一息吐いて覚悟を決めた大介は掛け声と共に教室のドアへ手をかける。と、その時、またあのイメージが頭に浮かび上がった。

 その頭に浮かんだイメージとは「クラスメイトの山田一三郎が良かったじゃん、と大介の背中を軽くポフっと叩く」イメージだった。

 家で慌てていた時に浮かび上がったイメージに似ている。もしかしたら、またイメージ通りになるのかも。
 そんな予感に囚われて体の動きを一瞬金縛りにでもあったかの様に止めた大介だったが、意を決してドアを開けた。

「ガラガラガラ」

 ドアと床の節の錆び付いた鉄の擦れる音、ドアに付いた磨りガラスの揺れる音等がしてそれは開いた。

 自然にその音を立てて開いたドアの人物に視線が集まる、はずだった。しかし、視線は集まらない。其処か教室はまるで昼休み時間の様な賑わいを見せていた。

 本来ならば、ホームルームが始まってシンと静まり返っている時間帯。だからこそ、視線が集まってしまうと恥ずかしい気持ちで大介はドアを開いたのだが、この有様はどうした事か。

 教室に一歩踏み入れて、立ちすくんだ大介だったが取り敢えず自分の席へ着く事にした。

 そんな大介に「あ、大介君おはよう」と気軽に声をかけてくるクラスメイト達。大介の混乱はさらに深まる。
 8時45分からホームルームは始まるはず。もう出席だって取られて静かになっていなきゃいけない時間帯なのに。
 と、そんな事を考えていたその時、友人の山田一三郎がポフっと背中を軽く叩いて来た。

「良かったじゃん」

 糸目面で夕焼け色をした赤毛の長めの前髪を揺らして一三郎は大介の前でニコっと笑った。

「何なんだこれ」

 席に座った大介は少し呆れ顔で教室を見渡す。

「いや、何か秋田先生がまだ来ていないんだよ」

 頭の後ろを掻いて一三郎ははにかんで話した。








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