[携帯モード] [URL送信]

ぷれ☆★いす
其の六

 大介は現実を見つめられず、目をぐっとつぶった。

 終わった。そして、俺もこれから殺されるんだ。全ては無駄だった。烈子、母さん、本当にごめん。俺には美耶の暴走は止められなかった。

 大介は目をつぶりながらも涙が流れるのを感じた。

 最後は一三郎と過ごした屋上か。それだけは良かったかな。

 覚悟を決めて目を開けた大介が最初に見た物は空を飛ぶ雀だった。

「……雀?」

 雀は、鳥は死ななかったのだろうか。不思議に思って大介は屋上からグラウンドを覗いた。

 そこにはグラウンドを元気に走る生徒の姿が会った。

 どうして?先立ったのはそんな気持ちだった。滅亡、全てが殺されたのでは無かったのか。しかし、それが起きていない事の答えは一つ。大介もジワジワと分かり始める。

 そう、人類は世界は滅亡していないんだ!と。

 そして、大介はふと美耶を見る。美耶は屋上の隅で体育座りをしてうずくまっていた。

「美耶……」

 どう言葉を掛けて良いのか分からない大介は名前を呼ぶのが精一杯だった。

 しかし、美耶は瞳に涙を浮かばせながらも笑顔で大介を見た。

「大介くん達の勝ち……だね。 トキシラズを切ったんだよね。 凄いよ」

「まぁ……な」

 特に自分の手柄でも無い事に弱冠寂しい物を感じた大介だったが取りあえず、うなづいた。

「じゃ、後は私の処分だね。 私は勿論、罰を受けて消去されたい」

「美耶……」

 そうだ。俺は今までこのためにここまでやったんだ。時の長として、悪戯に時を混乱させた奴を処分するために。途中、そんな事は忘れそうになっていた大介は美耶に言われて自分の目的を思い出す。

「消去……でいいんだな。 罪だって償ってもいいんだぞ」

 そう言われても美耶の気持ちは変わらなかった。

「大介くんの手で最後が迎えられるなら」

「分った」

 大介は良子に習った様に構えた。

 両の掌を相手の腹に当てる。そこに全魔力を集中させた。

「…………滅…………」



[*前へ][次へ#]

5/9ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!