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ぷれ☆★いす
其の三
 その言葉だけを真に受けると、あたかも滅亡するのを止める様に聞こえる。しかし、今まで美耶からそんな仕草は全く見られていない。むしろ、殺る気満々。それでも大介はもしかしたらという思いで美耶に尋ねた。

「美耶、止める気になってくれたのか」

「そんな訳無いでしょ」

 が、脆くも崩れ去る。

「俺は最初、俺の母親、元明日使いに美耶はトキシラズの力で今日っていう時間を繰り返して行く間に人々を消して行くっていう滅亡のプロセスを聞いていたんだ。 でも、美耶は時間を止めた。 それはどういう事なんだ」

「元明日使いもその程度の発想しか出来ないのね。 いや、それが普通か。 私もこの計画を持ち込まれた時には驚いたし」

「持ち込まれた? 誰にだ」

「大介くんには関係無いでしょ。 それよりも何で時間を戻すのに、トキシラズの力を破棄するのに殺せるのか聞きたいんでしょ」

 大介の考えを見透かす様に美耶は話した。そんな態度を見て大介はイラついたが、グット堪えて「あぁ」と返事をした。

「最後だから、教えて上げる。 トキシラズは人々から記憶を魔力に変換して吸収して成長する。 そして、契約者はその力を自由に扱う事ができるんだけど、その契約を破棄すると人々から吸収した記憶からの魔力が元いた場所に戻ろうとするの」

「普通の人達に魔力が」

「そう、それも3日分に凝縮された魔力だから普通の人達にはもちろん、強い魔力を持った人達だって堪えられない。 つまり、戻って来た魔力に潰されて死んでしまうの」

「そういう事か」

 妙に納得した大介だが、納得してどうする!と心の中で自分に突っ込んだ。

「大介くん、赤い赤い真っ赤な綺麗な花火だよ。 私からの最初で最後の贈り物。 そこでじっくり見ていてね」

 美耶は顔を正面に戻した。

 トキシラズの契約破棄を行うのだろう。背中で美耶は最後を語った。赤い花火、本当の花火なら綺麗だろうが、今この状況で連想される赤は血液。何が綺麗な物か。美耶から生まれるその発想だけでも美耶が正気の沙汰では無い事が分かった。

「美耶、止めろ。 考え直せ」

 大介は叫んだ。心の底から叫んだ。が、大介の眼前に新たな闇の手が現れ大介の口を塞いだ。

「大介くん、有り難う。 ここまで私に本気になってくれたの大介くんだけだよ」

 美耶が最後の別れを告げた時、その人影は現れた。

「美耶……ちゃん? 大……介」

 そこに現れたのは脇腹を押さえた一三郎だった。

 何でこんな所に。美耶は何か嫌な予感を感じて咄嗟に一三郎へ闇の手を放った。

 が、一三郎はそれらを寸でで躱す。

 躱された。しかし、驚いているのは一三郎本人だった。

「と、何だか良く分からないが大介、やっとお前の不可思議な行動の意味が分った様な気がする。 俺の誤解だったんだよな」

 口を塞がれた大介は「そうだ」と眼で一三郎に訴えた。

「で、この状況だと俺はお前を助けるべきなのか」

 一三郎はすぐに状況を判断し、身構え先程放った力をイメージする。この力で大介を掴んでいる闇の手を払いのけるつもりの様だ。次第に一三郎の周囲に力が湧き始めた。

「そんな事、させない」

 美耶は烈子に放った反射神経より早い闇の手を一三郎に放った。

 魔力の使い方に長けた烈子が捕まった闇の手。一三郎を捕まえるのはいとも簡単に思えた。だが、意外な結果が現われる。

「キィシィイィンッー!」

 魔力を使い始めた一三郎はうまく魔力を制御出来ず暴走させてそれが防御壁の役割をしたのだ。闇の手は無残に弾き飛ばされる。

「そんな……」

 美耶のうろたえる姿を見て、未だとばかりに一三郎は大介に魔力の刃を放った。

「ズサッ」

 闇の手は綺麗に切り払われ、大介を解放。形勢は一気に逆転された。

「こんな事って……、明日使いと昨日使いが目の前に揃うなんて」

「ザザザ……」

 木の揺れる様な音が微かに聞こえたが、誰の耳にも入らない。

「何の事だ?」

 うろたえながらも美耶は新たな闇の手を二人に向かって放つ。

 大介は闇の手の時間を遅らせて躱して行ったが、不馴れな魔力を放ったばかりの一三郎は先程の様な防御壁も出せず、簡単に掴まってしまったのだった。

「一三郎!」

 大介が時空間の剣を携え一三郎に駆け寄った時、その声が聞こえた。

「トキシラズよ。 お前との契約をここに破棄する」

「な、美耶。 止めろ」

「…………解…………」





















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あきゅろす。
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