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ぷれ☆★いす
其の二

 大介は時の魔力を発動させ、闇の手の支配から解き放たれようとした。が、時の魔力は一切発動しなかった。

「嘘だろ」

 予想外の事態に大介は顔を青ざめた。

 これでは、力付くで美耶の計画を阻止する事は出来ない。

 大介は魔力に頼らず、己が力で闇の手から逃げだそうともしたが、やはり身体はピクリとも動かなかった。

「美耶、お前」

「私の闇の手からは誰も逃げる事は出来ない。 その手に捕まった者は魔力を封じられるの。 それにその闇の手はどんな相手の動きも拘束する事が出来る馬鹿力を持っている。 大介くん、あなたは世界の全ての命が消える瞬間に立ち会えるの。 これって凄い事よ。 あ、哀しがらなくても大丈夫。 私も死ぬし、大介くんも死ぬから。 誰も孤独は味合わさせなからね。 そんな酷い事は絶対にしないから」

 この時間が止まっている非現実世界で全ての命を消すと非現実的な事柄を話す美耶の目は本気だった。

 大介は美耶の本気の瞳を見て己の中に怒りが込み上げて来るのを感じた。

「そんな酷い事って、酷い事をしようとしてるのはお前じゃないか、美耶」

「そう。 だから、私も迷った。 自分の居場所の無い世界。 でも、その場所を自分で作ってみよう。 そう考えて大介くん、あなたを待っていたの。 でも、来なかった」

「だから、あれは……」

「いいの。 それに私のやろうとしている事は確かに酷い事かもしれない……けど、」

 無音の世界で淡々と話す美耶はそこで言葉を詰まらせた。

「けど、何なんだ」

 威圧的に大介は問詰める。

「私が一人で死んで、居なくなった世界が何事も無く流れて行くのが恐くて恐くて恐くて」

 そう言葉を続けると大介を掴んでいた闇の手にいっそう力が入り始める。この闇の手と美耶の感情はリンクしているのかもしれない、大介は思った。

 より握り締められる身体を大介は感じて自分の命は美耶に握られている事を再認識した。

「大介くんは恐くないの。 もし、私の様な力があって、私の様に死にたくて、私の様に誰とも必要とされていない状況があったら同じ様な事、しないの? みんな殺されるったって誰も苦しまないんだよ。 そして、誰も気が付かない」

 大介を掴む闇の手にさらに力が入る。その痛みは大介の脳裏に工作等で使われる万力を思い出させた。ジワジワと確実に身体を押し潰して行く。それが両腕、両足にそれぞれ3本。叫ぶ様な痛みでは無いが、止まる事は無いであろう手型万力を思うと死の恐怖が脳裏をかすめる。拷問とはこういう事なのかもしれない。

 美耶に同調すれば、この手型万力は弱まるはず。しかし、それは滅亡しても良いですよと許可を与える事に成り兼ねない。そんな気持ちが大介に美耶の意見に反発する力を与えた。真に正しい事は大介には分からなかった。

「俺はしない」

「本当に」

「本当だ」

「……大介くんは強いんだね」

「そんな事は……」

「ううん、強いよ」

 そう言うと美耶は不意に大介へ背を向けて右手をゆっくりと高く上げた。

「待て、美耶。 お前これから一人一人殺しに行くのか。 誰も気が付かないで滅亡させるってそういう事なんだろ」

 そう問われ美耶は顔を横に向けちらりと大介を見た。

「違うよ。 トキシラズの力を破棄して世界を戻すの」

「世界を戻す……それって」



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あきゅろす。
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