ぷれ☆★いす
ぷれ☆★いす
「美耶、俺の気持ちは」
「うん」
駄目だとは分かっていてもどこか期待してしまうのか、美耶の胸は高鳴り始める。そして、大介の真剣なまなざしを目にして、美耶は大介への想いを再確認した。
汚れを知らない少年の様な瞳。
自分には決して持つ事の出来ない純真な瞳。
そう、私はこんな瞳をした面倒臭がりだけど、何だかんだ言いながら結局は言う事を聞いて人のために自分を犠牲にするぶっきらぼうな優しさを持つこの人が、大介くんが大好きなんだ、と。
しかし、今再確認した所で現状は何も変わらない。これから私は大好きな人に振られて全てと共に消え去るのだ。
大介への想いを募らせた分、美耶の中に淋しさや哀しさが込み上げて来た。
それは涙となって現われたが、大介が答えてくれるまでは我慢だと、美耶は涙を堪えていた。そして、大介がその口を開く。
「こんな事言うのもめちゃ恥ずかしいんだけど、美耶、お前は可愛い」
「え」
ストレートに駄目だと言う物だと思っていた美耶は面食らった。そして、相手を大切にする大介らしいなと美耶はほくそ笑む。
大介が恥ずかしいと言ったのは本当の様で大介は真っ赤になった顔から湯気を上げていた。
「でも、俺は好きとか嫌いとか、そういう事を考えた事が無かったんだ。 で、考えたんだが……」
美耶は喉を鳴らして唾をゴクリと飲み込んだ。
「俺は………」
「……………」
「俺は……」
「…………」
「俺は…」
「………」
「俺は自分の気持ちが良く分からないんだ」
「………へ」
「だから、分からないんだって」
「それってまさか、好きでも嫌いでも無いって事」
「まぁ、そうなるか」
面目無い。そんな面持ちで大介は頭を掻きながらそう言った。
「そ、そうなるかって、好きか嫌いかはっきりしてくれないの?」
「いや、俺もはっきりしたいんだけど、本当にそれが俺の気持ちだから」
分からない、多分それが本当に大介の気持ちなのだろう。しかし、それで美耶を納得させる事は出来なかった。好きと言われたらこの人と生きる、嫌いと言われたら命を絶つ、そのどちらかにしようときめていた美耶にとっては。
「それじゃ、私、死ぬに死ねないよ」
「じゃ、死ななきゃいい」
「な、私を馬鹿にしてるの?」
「そうは言ってないって」
私、本当にこの人の事好きなのかな。美耶は心の中でそう呟くと、辺りに闇を呼び寄せた。
闇は霧の様に辺りを支配しだす。
「美耶、まさか!?止めろ」
「止めろって、私このためにここに来たんだから。 そんな事言うのはおかしいよ」
そこには先程までのあどけない顔をしたいつもの美耶はいなかった。目を虚ろにさせて身体から魂が抜け落ちた様な表情をする。
「所詮、私はこの程度の人間なんだ」
闇は大介のいる空間にも及び、突然、その闇から無数の手が現れ大介の動きを拘束する。
「く、こんな物」
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