ぷれ☆★いす
其の三
その原因を作った張本人である良子は他人事の様に「まるで昼ドラみたいねぇー」と不謹慎な気持ちになりながら、二人の様子を眺めていた。
「何?! いいから早く。 傷見てあげるからこっちに来なさい」
手を捕まえようと手を延ばす烈子の母親だが、その手は烈子に振り払われる。
何だか昼ドラみたいと眺めていられない事態に陥りそうになり、良子は事情を話そうと二人の間に割って入った。
「すみませんお母さん、これにはちょっとした事情が……」
そう言おうとした刹那、目の前に拳が現われる。
「お前か!! 烈子をこんなにした奴ぁ!!」
「え?」
気が付いた時には遅かった。良子の顔に烈子の母親の鉄拳がめり込む。
「ちょ、お母さん! 何やってるの」
鉄拳を食らい、鼻血を流す良子だったが、力を受け流す様にして食らったので見た目程のダメージは無かった。
仁王立ちで烈子の母親は肩で息をしながら、こう言った。
「ハァー、ハァー、あ、あたしの烈子に手を出す奴は許、ハァーハァー、許さないんだから」
「お母さん……」
かなりの勘違いをしているがそれは烈子の母親の本心だった。
「れっちゃん、ね。 子供を思わない母親なんてどこにもいないのよ」
ニコッと鼻血を流しながら良子は烈子にそう言った。
「いや、良子さん。 そんな事より、鼻血何とかして下さい」
良子は改めて、今の世界の状況やこれまでの事情を烈子の母親へ端的に述べた。
「ふ〜ん。 何だか良く分からないけど、あたしはここに入ればいいのね」
割りとすんなり、烈子の母親は事情を呑んでくれた。
その内に着替えた烈子が玄関へ戻って来る。
「何、烈子。 そのイモジャージ」
烈子は動き安さを重視して上下赤色のジャージを履いて来たのだった。
「これから、戦い何だよ。 お母さんには分からないと思うけど」
口を尖らせて烈子は母親へ抗議する。
「それじゃ、れっちゃんをお借りして行きます」
「気をつけてね」
烈子の母親は烈子の頭をポンと叩いた。
「フン、何も知らないくせに」
再び、二人は自転車へ乗り、トキシラズの元へと飛び立って行った。
「何も知らないくせに……ね。 自由に好きな事させた方が良いと思って知らないふりしていたけど、それが仇になっちゃったのね。 そろそろ気が付いてあげようかしら」
ぽつらと呟き、烈子の母親は家へと戻って行った。
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