ぷれ☆★いす
其の四
「やっぱり、大ちゃんだったわね」
大介と烈子の顔を見ながら良子は肩で息を吸う。
「何で母さんがこんな所に?」
大介に率直にそう聞かれ良子は大きく2、3度深呼吸して、息を整えた。
「時が止まったでしょ。 そう感じていたら今度は大きな力がぶつかりあうのを感じて、何かあったなって思ってその場所まで走って来たらそこに大ちゃん達が居たのよ」
「そうか。 いや、今闇の長に、美耶に会ったんだけど、あっちから一方的に攻撃されて」
大介はここであった事を良子へかくかくしかじかと説明した。
「なるほど、かくかくしかじかね。 でも、ここまで来るの時間掛かったのね。 さっきも大きな力のぶつかりあうの感じたけど」
大介はその事もかくかくしかじかと大まかに説明した。
「そっか。 さっき、みっちゃんの使いの人が家に来てたから何か関係はあるのかなとは思ってたけど」
「光の長の使いの人?! 何もされなかった?」
「特にはね。 任務中断命令が入ったのでこれにてって帰っちゃっただけ。 せっかくお茶入れてたのに。 失礼しちゃうわ」
言葉に憤りを混ぜながら良子はそう言った。
「あ〜、お茶入れてたのか。 それならいいや」
「この人は……」と、大介が呆れ返る中、烈子はくすりと良子を見て笑った。
「それじゃ、取りあえずトキシラズを切らないといけないんだけど。 大ちゃんは学校に向かった方が良いみたいね。 本当なら大ちゃん一人でやらなきゃ行けないけど、時が止まるって緊急事態だからね。 トキシラズは母さんが切りに行くわ。 道案内、れっちゃんお願い出来るかしら?」
「あ、はい」
これからの動きを次々に決めて行く良子の姿をぽ〜と、眺めていた烈子は突然そう聞かれ、条件反射の様に返事をした。
「俺、一人で学校行くのか?ってか、母さんがあれを切れるのか?」
「もちろん。 母さんだってこうみえても元明日使いなのよ」
良子はエヘンと胸を張る。
「そっか。 じゃ、烈子。 悪いけど、母さんをよろしくな」
「うん。 まかしといて。 大介も気をつけろよ」
「おぅ」
互いの健闘を祈り、大介が美耶の向かったであろう自分の通う学校へと向かおうとした矢先、良子に呼び止められる。
「大ちゃん」
「何だよ」
面倒臭そうに大介は良子に振り返った。
「大ちゃんの声なら美耶ちゃんに届くはずだから面倒臭がらず、きちっと向き合って真剣に話すのよ」
「あぁ」
大介は素っ気無く返事して再び学校へと向かった。
そんな大介の後ろ姿を見て、良子は目と顔を落ち着き無く動かし始める。
これから戦いに行く我が息子にもう伝える事は無いだろうか?
そして、良子は焦り考えながら再び大介を呼び止めた。
「あ、そ、そうそう。 大ちゃん」
「あー、何だよ」
再び、出鼻を挫かれた大介は振り向き、イライラを募らせる。
「トキシラズの呪縛を解く方法、教えておくわ。 これから先も使えるから」
「あ、あぁ。 有り難う」
母さんは自分のためにアドバイスしてくれていると分った大介はイライラを落ち着かせた。
「明日使いは物や相手に触れる事でその物に流れる時間を感じる事が出来るの。 今はほぼ全ての物がトキシラズの時を止める力で支配されているから触れても感じ難いけど、感じる事が出来たらその止まっている流れを自分の時の流れの中に引っ張って混ぜてしまうの。 そうすれば、引っ張られた方は大介の流れに合わせて時を進ませ始めるわ」
何だか分かる様な分からない様な説明に大介は頭を悩ませる。
「やってみなくちゃ分からなそうだな」
「そうね。 感覚で覚える物だから」
「ま、あんがと」
そして、三度大介は走り出す。
そして、
「大ちゃん」
また、良子の呼び止め声。先程の様なあせあせする様子や迷いは見受けられない。
そして、大介も
「何だよ」
と、返事をする。先程の様なイライラは感じられない。
「頑張ってね」
「おぅ」
そうして、ようやく大介は学校へと走り出し、そんな仲の良さそうな家族を烈子は羨しそうに見ていた。
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