[携帯モード] [URL送信]

ぷれ☆★いす
其の二

「あたしは望まれなかった子供何だよ」

 肩を震わせながら力無くそう言った。

 大介は無言で次の言葉を待つ。

「出来ちゃった結婚って奴か。 遊んでる内にあたしが出来ちゃったんだよ。 その男、あたしの父親に当たる男とはあたしが出来てからすぐに離婚。 今は家で違う男とイチャついてる」

「そんな家庭環境なのか。 俺には耐えられない」

 烈子の荒れた家庭環境を想像して、大介は気持ちが沈むのを感じた。

「そう。 そんな時に光の長に、師匠に出会ってさ。 隠れてこんな事やっていたらさすがに心配するだろうなって思って弟子なんかになったんだけど。 心配所か、あたしがそんな事をしている事すら気が付いていない。 で、その時分った。 あ〜、この人は男に夢中であたし何て眼中に無いんだなぁって」

 肩の震えを止め、どこか明るい烈子の声が大介の耳に痛々しく響いた。

「いや、でも気がついているんじゃないか? 何も分からない親何ていないだろ」

「気が付いていないよ。 あたしが出る時はあたしのコピーを置いて行くし」

「でも……」

「いや、いんだよ。 あたしの場所はあそこに無かっただけ。 あたしにはこの師匠との場所があるから」

 烈子の痛々しい明るい声は段々と掠れていった。自分にそう言い聞かせる様に。

「まあ、烈子がそう思ってるんだったら俺からは何も言えないが、自分の気持ちに嘘は吐かない方が良い。 母親との場所が欲しいんなら思い切って言えば良い。 気持ち何て言葉ではっきり言わなきゃ伝わらないからな」

「……ありがと」

 そう話している内に歴史の建造物等に出て来る様な厳格な感じのする和式の家が見え始めた。

「おい、美耶の家が見え始めたぞ」

「あれだな、闇の力をビシバシ感じる」

 烈子は歴史の建造物等に出て来る様な厳格な感じのする和式の家を目指して自転車を走らせた。

「よし、大介。 チャッチャと片付けちゃおうぜ」

 何かが吹っ切れたかの様なその明るい声は痛々しさを感じさせないいつもの烈子らしい元気な声だった。

「よし、面倒臭いがやるしかないな」

 烈子と大介は互いに目を合わせ、うんと軽く頷いた。

 美耶の屋敷はうっすらと黒い霧の様な何かに包まれていた。

「これが闇の長のねぐらか」

 地上へと降り立った大介と烈子は自転車を近くに立て掛け、美耶の屋敷の門を眺めた。

 屋敷全体に包まれた黒い霧の様な何かは屋敷の入口である門ももちろん包み込み、異様さを醸し出している。

「この霧みたいなの正体が掴めない内は危険だな。 よし、それじゃ」

 何かを決意したかの様に烈子はそう言うと腰元に右手を構え、握り拳を作る。次第にその握り拳は輝きを放ち始める。

「おい、烈子。 お前何をしようと」

「あ? 見てたら分かるって」

「お前、まさか……。 悪い事は言わん。 それはやめとけ」

 次第に光は輝きを増し、握った拳から沸き出す闘士のせいか拳を中心に風が現われる。白のお姫様ドレスが風にふわりとなびき、その存在感をアピールした。拳から放たれる光もお姫様ドレスのアピールに一役買っている。

 学芸会用のお姫様ドレス、舞台名を付けるとしたら「闘うおてんばプリンセス」で決まりだろうか。

「こぉんのやろぉ!!」

 烈子の渾身の右ストレートが完全に門を捕らえた。

「ゴォォォオォォォン!」

 爆弾でも破裂した様な鼓膜を引き裂かんばかりの音が当たりに木霊する。そして……。

「イッタァアイ!!」

 またしても、鼓膜を引き裂かんばかりの悲痛な叫びが当たりに木霊する。

「だから、止めとけって言っただろ」

「どういう事だよ」

 烈子は半泣きしながら腫れる拳にフーフーと息を吹き掛け、文句ありげにそう言った。

「時が止まっている。 全てのありとあらゆる生物の物質の時間が止まった。 時が動かなければその物体が動く事は無い」

「それじゃ、あたしが殴ろうともこの門は時が止まった時間の形のまま、何をしたって動かないって事か?」

 無傷の門を撫でる大介。

「まぁ、そんな所だろうな」

「そういう事は先に言ってくれよ」

 烈子は脱力し、両手を後ろで付き、その場に足を内股に立てたままペタンと座り込んだ。まゆをしかめて頬をブーッと、納得が行かない子供の様に膨らませる。

「いや、だから止めとけって……」

「ギシギシギシ……」

 と、その時地鳴りの様な音が聞こえた。

「な、何?」

 烈子はその場に座り込んだまま、辺りを見回した。

「門が開くみたいだ」



[*前へ][次へ#]

2/14ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!