ぷれ☆★いす
能力☆★正体
口にパンを銜えたまま、大介は自転車を走らせた。
左腕に巻いたデジタル式の腕時計を見て時間を確認する。
「8:18、か」
スーパーもじゃ毛に時間を掛け過ぎた。
そんな事を後悔しながら、自転車を漕ぐペダルの足により力を入れて、大介は走った。
このままいつもよりスピードを出して走ったって間に合いそうに無い。
口に銜えていたパンを口で押し込んで、ゴクリと喉を鳴らし飲み込むとさらに気合いを入れた。
「よし、あそこから行くか」
普段はまず、通る事の無い自転車専用道路、ここを通れば最短距離で学校へ着く事が出来る。そして、大介が普段、ここを通らない理由がそこにある。
最短距離であるからこそ、道は混むしあまりスピードが出せないのだ。
今の時間帯であれば、普段より人も少ないだろうし、スピードも出せる。いちかばちかには打って付けの道であった。
自転車専用道路へと続く、道へと大介はペダルを急がせた。
「自転車専用道路」という看板が指し示す様にそれはすぐ後ろの道の事。そして、大介はその道へ直行した。
大介の読み通り、ほとんど他の自転車は通っておらず、短時間で行くには持って来いの道だった。
大介は自転車のギアをここぞとばかりにチェンジしてスピードを上げに掛かった。
ペダルを強く漕ぐ度に自分が風の一部になった様なそんな気持ちになりながら、次第にスピードも上がり始める。
これなら間に合うと確信したその時だった。
前からすごいスピードで自転車を漕いだ女子高生が大介目掛けて突っ込んで来た。
「ちょ、ちょ、ば、止まれってってぅあぁ!!」
「ガンゴロゴロン!」
女子高生を躱そうとした大介は道の端によったのだが、それが間に合わず接触して二人はそれぞれバランスを崩して横転した。
どうやら女子高生の自転車の前輪が躱そうとした大介の自転車ペダルに引っ掛かってしまった様だ。
大介は自転車を起こして先に立ち上がった。
「ってぇ…、あ、大丈夫か?」
自然にまだ倒れている女子高生へ手を差し出す大介。
「いいよ。自分で起きれるから」
女子高生は差し出した手を払い、自力で立ち上がった。
「いや〜、また、やっちゃったな。わりぃわりぃ」
「ほんとに悪いと思ってるの?」
女子高生は制服や膝等に付いた埃を払いながら言った。
「ほんと、悪いと思ってるって」
「まぁ、いいよ。あたしも急いでて前見てなかったから。それじゃ」
そう言うと女子高生は自分の自転車を起こしてまた走り出して行った。
あんなスピードで突っ込んで来られたら躱せないよな〜。
そんな事を心で呟きながら、また、大介も走り始めた。
しかし、ここで大介は自分の言ったある事に疑問を抱いた。
……あれ?
……俺、
……さっき、
……またって言ってた?
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