ぷれ☆★いす
其の三
そして、大介に伏せ字無くゴキブリと断言された闇の塊の一人が自転車に追い着き、掴んだ。
「嘘。 光の弟子のあたしが捕まった」
光の弟子という事にどこか自信を持っていたのか、まさかの事態に烈子は気を動転させた。
そして、その一人を皮切りにゴキブリの様な闇達は次々に自転車を掴んでいった。
「こいつら、くそ。 落ちろ。 このやろ」
大介はタイヤに捕まるゴキブリの様な闇に蹴りを入れるも全く落ちようとしない。
だんだんと自転車も重さに耐えられなくなってきたのか、スピードも落ち始める。
「大介、何とかして。 あたしは飛ぶのに一杯一杯だし、あんた明日使いなんでしょ」
烈子から思わぬ弱音が飛ぶ。
そう、自分は明日使い、時を守護する長なんだ。俺にだって何か不思議な力が使えるはず。でも、どうやって。
大介は気合いを入れて、「ハァー」とか「おりゃー」とか「ザ・〇ールド」とか叫んで見たが不思議な力は一向に出現する様子は無かった。
「長なのに力も使えないのかよ。 こんな奴で本当に」
自転車に乗り切れなくなったゴキブリの様な闇は大介や烈子の頭や身体に乗っかり始めた。それでも乗り切れずにあまった者達はさらにそのゴキブリの様な闇の上に重なる様に乗り、空の上に異様な黒い塊が浮かばせた。
「くそぅ、面倒くせぇ」
呟く。大介は呟く。しかし、その声は闇のざわめく音にかき消された。
「大介が力を使えてたら、こんな事になんか」
「面倒くせぇ。 あぁ、面倒くせぇー」
呟く、呟き、大介はとうとう叫んだ。
「ちょっと、めんどくさがってないで何とかしてって、あれ、身体が軽い…」
大介が叫んだ瞬間、自転車全体が軽くなっていた。
そして、自分達の動きを邪魔する様にねちっこく捕まえていたゴキブリの様な闇の塊達はその手を次々に離していく。
「諦めたのか」
烈子は振り向いて風に流されて行くゴキブリの様な闇の塊を不思議そうに眺めた。
そして、烈子は流されて行くゴキブリの様な闇の塊の一人から腕に切り口があるのを見つけた。何か鋭利な刃物でスパッと切られた様な切り口だった。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
後ろからは大介の苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
これは闇の塊達が諦めたんじゃ無い。
「大介、大丈夫」
「ああ、何か良く分からないけど、力使えた様だな」
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