ぷれ☆★いす
其の二
「あぁ、それは母さんから今朝聞いたけど、あのおっさんも風の動きをいたずらされたら覚醒するのか。 風使いのおっさんか」
風を華麗に操るおっさんの姿を想像して、大介は風がいたずらされない事を切に願った。
「これで容疑者がまた一人減ったな。後は5人か」
後の5人とはあのおっさんと烈子を除いて、昨日は居なかった秋田先生、それにあの生徒想いな遠藤先生、美耶の家にいる執事の田中さん、そして、美耶本人、喧嘩した親友の一三郎。
一応、その容疑者の事を大介は烈子に教えた。
「あ、その秋田先生ってあたし達の下僕よ。 正体は光の馬だから」
あの秋田先生が光の馬なのか。また、一人容疑者が減った事に喜ぶ以上に大介はその事実に驚きを感じた。
「その前の日、闇と対峙して、光の馬、怪我しちゃったんだよ。 それで学校行けなかったんだろ」
さらに烈子から補足説明が入った。
「その戦った時に闇の長を見たのか。 何か覚えてはいないか」
前日に闇と戦っていたのなら闇の長の正体も何か分かっているかも。大介は藁をも掴む気持ちで烈子に聞いた。
「あたしもそれを思い出そうとしていたんだけど、どうしても思い出せなくてね」
猫型のキーホルダーから歯痒そうな声が聞こえる。
「闇の長って、トキシラズの種を蒔く前から何とか自分で命を断とうとしていたんだけど、そうなっちゃあたし達もちょっと困る事があってその度に何回も阻止してたんだ」
それだけの烈子の話しを聞いているだけだと、闇の長の顔くらい覚えていたって良さそうな物。だが、やはり、烈子にも理解出来ない何かがある様で烈子の説明は続く。
「そうだよ。 覚えていたって良いんだけど、覚えてない。 そこだけの記憶がはぎ取られている感じがする」
記憶の操作をされている事を示唆させる烈子。これにも、またトキシラズの力、闇の長の力が関わっているのだろうか。
良子に聞いたトキシラズの力は、記憶を吸収してそれを魔力に換えているという事と、時間をコントロールするという2つのみ。その他にも良子には分からない力があるのだろうか。トキシラズという時間を操る化物にはそんな力があってもおかしくない様な気がして、大介は強大な力を再認識した。
「ごめん。 覚えていなくて」
申し訳無さそうな声で烈子は謝った。
烈子に最初に会った時は気性の激しい娘だと大介は思ったが、自分に責任があると感じるとすぐに謝る姿勢を見て、良くも悪くも自分の気持ちに素直な純粋さを持っている娘なんだと烈子の性格を改めた。
そんな風に烈子を見ると何だか可愛らしさを大介は感じた。
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