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ぷれ☆★いす
其の八

「ぅぅ…」

 低い唸り声をあげて大介が目を覚ますとそこには、母、良子と謎の鉄拳少女が居た。
 大介はベッドへ横になっており、冷却剤のアイスノンがタオルに蒔かれて殴り付けられた右頬を冷やしていた。

 鉄拳少女が申し訳なさそうな顔で大介をちらちらと見ていた。

「いや、ごめん。 ほんと、ごめん。 事情知らなかったんだもんね。 それなのに殴り付けちゃって」

「はぁ〜」

 訳の分からない大介はそう声を出すだけだった。
 その間へ母、良子が割り込んで入り、鉄拳少女のフォローをした。

「大ちゃん、この娘はね。 烈子さんって名前でね、光の長の弟子なんですって」

「はぁ〜」

 二人が会話をする間も始終、鉄拳少女烈子は「ごめん」を繰り返す。

「で、そのハンドベルを鳴すと、光の長ではない人でもれっちゃんを呼べるんですって」

 頭を朦朧とさせて大介はアイスノンを頭に移動させた。

「で、いつでもどこからでも呼べるから時間帯には注意する様にとか、何にも光雄さん、説明していかなかったでしょ。 だから、こうして謝っているのよ」

「いや、本当ごめんね」

「いや、試し振りした俺も悪かったし、いいよ。 別に」

 そう言われて鉄拳少女烈子は胸を撫で下ろした。

 大介の右頬の痛みはジンジンとして止まなかった。
 大介は頭を冷やしていたアイスノンをまた右頬へと戻した。

「それじゃ、お母さんは下に戻るわね」

 ニコッと二人に笑いかけ、良子は一階へと戻っていった。

 部屋に残された殴った烈子と殴られた大介、それぞれ二人は微妙な自分の立場を理解してか、無言で相手の出方を伺う。

 殴ってしまった言わば、加害者の烈子の方は良子という二人の間を取り持つワンクッションを失い、何とも話しかけられず、もじもじと正座の足を動かし黙っており、殴られてしまった言わば被害者の大介は普段目にする事の無い、同年代くらいの女の子のパジャマ姿に目も当てられず、アイスノンで目を隠すばかりだった。

 そんな中、沈黙が苦痛になってきた烈子が先に口を開いた。

「あ、あの顔、大丈夫」

 罪悪感を感じてか、両の手を膝でかがめ、横目でちらりと、大介を見る烈子。

 大介は「こんなの痛くないよ、だいじょぶじょぶ♪」と音符マークを語尾に付けるくらい軽快に自分の打たれ強さをアピールしたかったが、仰向けに寝そべってアイスノンで頬を冷やす一発K.Oな自分をどう頑張っても否定する事は出来ず、そんな事、言える訳も無かった。

「まぁ、悪いけど大丈夫ではないよ」

「そう、だよね」

 たった、一言三言を話し、二人に再び沈黙が訪れる。

 住宅街のどこからかワォーンと犬の遠吠えが聞こえた。

「でも、さっきも言ったけど、仕方が無い事、悪いのは何の説明もしなかった光の長だ」

 犬の遠吠えを皮切りに再び、話し始める二人。

「でも、ごめん」

 大介のフォローも虚しく烈子はごめんと口にする。そして、再び二人に沈黙が訪れ様としていたその時、大介はある事に気が付いた。

「あれ、あんたもしかして……」

 目に被せていたアイスノンを取り、大介は体を勢い良くグイッと起こしてじっと穴が明く程、烈子の顔を見つめた。

「ちょ、何。 見すぎ見すぎ」

 見つめられる烈子は顔を苺の様に赤らめて恥ずかしい事をアピールした。また、見つめられるのも満更でないのか、顔は背けてはいるが、照れ笑いを浮かべている。

 烈子は肩まであるセミロングの髪をした活発な印象を与える女の娘。背は低く、そこがコンプレックスになっている様だが、周囲や友達からは小さいね、と可愛がられている。お洒落が好きで自分磨きにも妥協は無い。その賜物か烈子の肌はいつも茹で卵の様な弾力と艶のある白色。顔も烈子の自慢で特に黒真珠の様に輝く黒目がちな丸い目には自信があった。そして、当然の様にそんな自分が烈子は好きだった。



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