ぷれ☆★いす
其の七
2階へと戻った大介は自室のドアを開けて入ったかと思うと、すぐにドアをよし掛かる様にしてバタン、と閉めた。
あんな母さんの顔は初めて見た。俺を殺しに来る。確かに奴等の計画が世界滅亡なのであれば……邪魔な俺は……最初に殺されるんだ。
自分でそう考えて大介は背中にゾワリと寒気を感じた。人に言われても現実感が無いけど、自分で改めて、そう考えると恐ろしく現実感が増した。
怖い怖い怖い。俺は殺されるんだ。誰だ!?誰が、闇の長なんだ!?そうだ。イメージと違う人、それを思い浮かべれば……。
大介はイメージと矛盾する動きをする人物を思い浮かべた。
「まずは、え、あいつ? こいつもか?! 馬鹿な、何人いるんだ。 嘘だろ?」
イメージと違う動きをしている人達は全部で七人。
多過ぎるだろ!?いや、この中には魔力の強い一般人も混じっているんだ。それならまだ、絞れる気がするけど。
その七人とは「大介が学校へ登校中にぶつかった女子高生、今日は居なかった秋田先生、それにあの生徒想いな遠藤先生、美耶の家にいる執事の田中さん、そして、美耶本人、奇声をあげる大介に声を掛けて来たおじさん、最後の一人は喧嘩した親友の一三郎だった。
闇の長に一番近いイメージを持っていたのは美耶だった。暗闇が好きで死にたがりで。考えれば考える程、美耶は闇の長のイメージにピッタリだった。
そうだ。美耶、明日学校へ行くと言っていたんだ。俺は一緒に行くと約束した。もしかしたら、何かを企んでいるのかもしれない。
大介の妄想という名の暴走は止まらない。
どうすれば、良い?
その時、大介はあの光の長が渡してくれた光り輝くハンドベルを思い出した。
確かリビングのテーブルに置いてあるはず。
大介は一階へハンドベルを取りに戻った。
リビングはもう既に照明が消され、真っ暗だった。
母さんはもう寝たのだろうか。
大介が照明電灯のボタンに手を伸ばしたその時、奥の畳の部屋から母、良子のすすり泣く声が聞こえて来た。
「……大ちゃん、変われる者ならば、私が変わってあげたい……」
自分のために母さんが泣いてくれている。本当に俺の事を心配してくれているんだ。
大介は良子に気が付かれない様に静かにハンドベルを取りに行った。その間も母、良子のすすり泣く声は止まなかった。
大介のハンドベルを握る手に力が入る。
俺は死ねない。
大介の中に強い意志が生まれた。
俺には俺のために泣いてくれる人がいる。俺の場所がある。
そう、俺は闇の長に罰を与える事が出来るんだ。相手だってそう簡単に手だしは出来ないだろうし。明日、母さんに罰の与え方を聞こう。
どこか勇気が沸いた大介は二階へと戻って行った。
自室へと戻った大介は机に座ってハンドベルを見つめる。光の長が渡した時には光り輝いていたハンドベル、今はその輝きは無い。
本当にこれ、大丈夫なんだろうか。
何か困った事があったら振りなさい、光の長の助言を思い出す大介。
でも、本当に何かあった時に何も起こらなかったらどうしよう。
俺は死ねないんだ。
これは絶対に死ねない戦いなんだ。
そう、自分に言い聞かせて大介はハンドベルを振ってみる事にした。
「リ………ン」
気高い音を立ててハンドベルは鳴った。しかし、これと言って何も起こらない。
「キーーーー…ン」
「なんだ、なんだ」
突然、大介の前方が激しい光をあげる。大介はあまりの眩しさに目を塞いだ。
光はさらに強さを増し、球体を形成していった。そして、少しづつ、柔いでいった。
光を感じなくなった大介は目をゆっくりと開いた。
「え?」
そこには、何故かパジャマに着替え中であろう女の娘が現れた。歳は大介と変わらぬくらいだろうか。パジャマの間からちらりといわゆる純白のブラジャーが見え隠れする。
「えっと、これは」
その状況に気が付いたその女の娘は問答無用で大介を殴り付けた。
「なに見てんだぁぁぁ!」
女の娘の鉄拳は全く事情の飲み込めない大介の右頬を捕らえた。
その鉄拳により吹っ飛んだ大介は壁にぶつかり、その動きを止める。
「いったい、何が何やら」
そう言って大介は気を失った。
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