ぷれ☆★いす
其の二
老人、光雄と良子二人だけが、何かを知っている様でウンウンとうなづいている。自分だけが話題から外されている様な孤独な気持ちになった大介だったが、まだ、不調の身体を早くベッドへ休めたくて投げやりな口調で応答した。
「そんなのいいからさ。 さっさと話し進めて」
「ちょっと、大ちゃん。 そんな言い方無いでしょ」
我が子のふて腐れた様な態度に良子は釘を打った。
それでも、大介はその姿勢を崩そうとは思わなかった。自転車から転倒してあちらこちらに擦り傷を作った痛い体を無理やり起こして来たのに見せつけられる内輪話。俺を何だと思ってるんだ。面白くない。
大介に苛々が募る。
大介はテーブルに片肘を付き、顔を乗せ、老人から顔を背ける様に横を向いた。空いた片手で耳をほじる。あからさまに人を馬鹿にした態度。
老人、光雄もそんな大介を見て考えを改めた。穏和な表情が崩れ始める。
「ふむ。 大介よ。 もう少し柔らかく話すつもりじゃったがな。 話しの意味をすぐに飲み込む自信もあるのじゃろ。 あい分かった。 そなたの意向通り、早く話しを進めよう」
「すみません、光雄さん」
良子は唯唯、平謝りした。
そんな良子の態度を見て、大介は少し驚いた。
何だ。この爺さん、そんなに偉い人なのか?だとしたら、今この自分がしてる態度って。
取りあえず、大介は肘を付くのをやめて見た。
「さてと、では、始めよう」
テーブルの前に差し出されていた玄米茶を光雄はゴクリと一飲みした。
「では、率直に言おう。 大介よ。 お前が世界を救うのじゃ」
真剣なまなざしで光雄は大介をじっと見つめた。
「ハ、世界を救うって!?」
いきなりぶっ飛んだ話しをされ、しかも頼まれた大介は激しく困惑した。
老人の眼に嘘、偽りは感じさせない。それが大介をさらに困惑の渦へと陥れた。
「ちょっと、待て。 訳が分からな過ぎる。 もうちょっと、分かりやすく……」
「早く話せって言ったのは大ちゃんでしょ」
良子が大介の話しへ釘を刺した。
「だからって、世界を救うにしてもそれの意味とか分からなかったら、世界だって救えないし、そっちだって困るだろ。 ってか、何だ世界を救うって。 大体、何から世界を救うんだよ」
一人で騒ぎ立てる大介に誰も構おうとはしなかった。
「では、大介よ。 頼んだぞ。 何か分からない事や困った事があったらこれを振ると良い」
光雄はそう言って白いローブから光り輝くハンドベルを出し、テーブルへ置いた。
「いや、今がその状況にピッタリなんですけど」
「さらばだ、大介。 また、会おう」
そう別れを告げると、謎の老人、光雄は白いローブをなびかせて駆け足で去って行った。
「いや、待て。 話し進めるにしても一方的過ぎるだろ」
大介は擦り傷の痛みに耐えながら、光雄を追いかけた。
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