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ぷれ☆★いす
其の八
「おい、大介。 飯食いに行こうぜ」

 いつもの様に一三郎は大介に声を掛けた。
 今、一三郎が行こうと誘っているのは学校の屋上。
 大介と一三郎は昼休みには決まって学校の屋上で昼ご飯を食べていた。
 漫画やドラマで良く見掛ける昼休みを体感したい、という一三郎からの提案であった。しかし、実際の学校は屋上まで手入れが届いておらず、草やどこから飛んで来たのか分からないゴミ等が散乱するあまり気持ちの良い場所ではなかった。

 夢破れた一三郎と大介だったが、屋上昼休みの夢を体感するため、一日一日掃除をし始め、綺麗に整備するまでに至った。いわば、あそこは二人で作り上げた昼休みパラダイスであった。

「いい。お前一人で行ってこい」

 俯せたまま、大介はパラダイスの誘いを断った。
 今までこんな事は一度も無い。
 一三郎は大介に何かが起った事を悟った。

「何かあったのか?」

 ストレートに一三郎は大介に問い掛けた。それだけ、二人の仲は良かった。

「何でも無い。 いいからお前一人で行ってこい」

 気怠くなった大介は友に同じ言葉を投げ掛ける。

「何だよ。 お前、人が心配してるってのに。 何だ?その頭のもじゃ毛が時間が無くてセット出来なかったから気分でも悪いのか?」

 一三郎だけが許される過剰ないつもの冗談を言ったつもりだったが、この時の大介はいささか気分がおかしかった。

 その過剰な冗談を聞いた大介はスッと立上がり、親友である一三郎の右頬を力の限り、殴ったのだった。

「バコッ」

 鈍い音を立てて一三郎の顔は強制的に右を向かされた。
 自然と右頬を擦る一三郎。
 昼休みで賑わっていた教室も二人の行為に気付いて突然、シンと静かになる。そして、だんだんと声が飛び始める。

「何、喧嘩なの」

「あいつら、仲良いだろ」

 ざわざわざわ…。

 大介もそんな自分の行いにハッと気付き、すぐに謝った。

「あ、悪ぃ」

 大介の拳もジンジンと痛む。その痛みがどれだけの力で親友を殴ったのかが伺えられた。

「いいよ。 それがお前の答えなんだろ」

 一三郎は鋭い目付きで大介を睨んでそれだけ言うと、ざわつく教室を立ち去った。

 ざわざわざわ…。

 そんなざわつく教室の中には殴った張本人である大介が取り残された。

 たとえ気分がおかしかっただろうと親友を殴ってしまったなんて…。
 そんな後悔と自己嫌悪で大介は一三郎の姿が見えなくなったと同時に膝をガクンと落として尻を椅子へとぶつけた。

「キーンコーンカーンコーン……」

 大介の昼休みはショックで膝を落としたそのままで終わりを告げる。




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