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ぷれ☆★いす
其の七

 時計はすでに9:10を指していた。1時限目の授業は9:00、調度。もうとっくに始まっている。大介は急いで教室へと戻った。

 と、そんな大介が走り去った誰もいない廊下のどこからともなく湿っぽい不気味な笑い声が響いてきた。

「くくくくくく…。 そうか。あれが明日使いか…」

 そんな意味深な湿っぽい不気味な笑い声は明るい日差しの入る廊下に暗くて気色の悪い余韻を残した。

 再び、教室のドアの前へとやってきた大介だが、ドアに手を掛けようとして、その手を止めた。
 また、あのイメージが浮かぶかも知れない。
 先程に浮かんだ一三郎のイメージもやはり、当たっていた。このドアに手を掛けたらまた…。
 突然に自分に起った理解不能で正体不明な現象。それが大介の心に不安を持たらせる。

「ドクドクドク」

 自分でも心臓の鼓動を感じる程、時間が経つに連れて不安は一層、深まっていった。そして、時を同じくしてもう一つの気持ちも深まっていく。
 そのもう一つの気持ちとは、何でこんな事で俺はビクビクしなきゃならないんだ、あぁ面倒臭ぇという大介らしい気持ちだった。

「スゥー、ハァー……」

 深呼吸して大介はドアに手を掛けた。大介の中で面倒臭いという気持ちが勝った様だ。

 大介はそのままドアを開いた。手を掛けた瞬間にもイメージは浮かんで来なかった。
 やはり、気のせいだったんじゃないか。と大介は思いたかったが、2度も起って当たった現象。
 頭でそうあやうやに紛らわせてみても心はそれを決して許してはくれなかった。

「ガラガラガラ」

 音を立ててドアが開く。

「おぅ、鈴木。 わざわざ聞きに行ったんだってな。 話しは聞いているから早く席に着け」

 やはり、すでに1時限目は始まっていた様で国語の教科担当の先生に言われるまま、大介は自分の席へと移動した。
 2つ隣りに座っている一三郎が「お・つ・か・れ」とくちぱくで友の行いを労ってくれた。

 大介が席に着いた後、授業は再会される。

 自分の身に何が起っているんだろう。窓側に座る大介はその答えを求めて青い空に浮かぶ流れる白い雲を自然と見上げていた。

 そんな不安な気持ちに晒されながら、午前の授業は一括り終わった。この授業中にはあのイメージは浮かび上がって来なかった。

「キーンコーンカーンコーン…」

 スピーカーから流れるチャイムの音が生徒達へ昼休みを報せる。
 そのチャイムを聞いて生徒達は思い思いに伸びをしたり、肩を回したり、リラックスをしていた。
 そんな中、大介はあのイメージに不安を抱き、どこかリラックス出来ずにいた。
 何なんだろ、あれは…。静かに拡がる漠然とした不安な気持ちは大介を面倒だと、苛つかせるまでに至らず、心の中をじと〜っと支配する。
 だんだんと気怠くなって大介は昼ご飯を食べ様ともせず、机に俯せた。



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