ぷれ☆★いす
其の六
1階へ着いた大介は職員室に続く廊下を経て職員室へと辿り着いた。
「ガラガラガラ」
大介は静かに開けたつもりだったが、ドアは音を立てて開いた。面倒と思う気持ちが行動にも出てしまったのかも知れない。
「失礼します」
大介は一礼して職員室の中へと入って行った。
職員室は通常の教室2つ分くらいの広さがあり、その室内には教師の物であろうデスクが向かい合わせになって、隙間無く並んでいた。
綺麗に整理されているデスク、書類やら教科書やらでぐちゃぐちゃのデスク、デスク一つにもそれぞれの教師の特徴が見て取れる。
もうすでにホームルームが始まっている事もあり、職員室にいる教師は僅かばかりだった。
そんな僅かばかりの教師の中から2年A組の担任である秋田先生を探してみるも見つからない。
そんな職員室の入口でキョロキョロしていた大介を不思議に思ったのか美術担当である遠藤先生が話しかけて来た。
遠藤先生は絵が上手いのはもちろんの事、スポーツも万能でさらに気さくで生徒思いな性格から生徒に人気のある男性教師だった。大介もそんな遠藤先生が好きだった。
「鈴木、こんな所でどうした? もうホームルームは始まっているんだぞ」
丸めた何かの書類で遠藤先生は自分の頭をポンポン叩いて、不思議そうな表情をしていた。そんな遠藤先生の仕草や表情から極当たり前に生徒を思う遠藤先生らしい性格が垣間見え、大介の緊張感は幾分か解かれた。
大介は遠藤先生に秋田先生の来ない理由を聞いてみる事にした。
「実はまだ、秋田先生が内の教室に来ていなくて」
伏し目がちに話す大介の話しを聞いて、遠藤先生は目を丸くして驚いた。
「何? まだ秋田先生来て無いのか。 何にも連絡来てないと思ったけど、ちょっと待ってろ」
そう言うと遠藤先生はすぐに奥の方へと走って行った。
遅刻なのだろうか。大介は心で呟いた。
しばらくすると、遠藤先生は丸めた書類の様な物で頭を掻きながら奥から戻ってきた。
「待たせたな」
「秋田先生から連絡は?」
「いや、それがなぁ、まだ入ってないみたいなんだよ」
困った顔をしながら苦笑いを浮かべる遠藤先生。
「分かりました。取り敢えず、みんなに伝えます」
「おぅ、悪いな」
一礼して大介は職員室から退室しようとした時、遠藤先生に再び声掛けられた。
「ちょっと待て、鈴木」
「何ですか」
振り返って遠藤先生を見返す大介。
「何でお前、わざわざ聞きに来たんだ?」
「え、がっきゅういいん、だからです、けど?」
学級委員として聞きに行かなければ、後から面倒な事になるからとは言えない大介。自然に歯が浮いた様な口調になる。
「おぅ、鈴木。 お前、学級委員なのか。 偉いなぁ」
生徒を信頼している先生だからなのか大介のそんな口調に気が付かず、逆にそんな大介の行いを遠藤先生は褒めてくれた。
何となく、大介の心はくすぐったくなった。
「俺も早く担任になりたいもんだよ」
遠くを見る様に目線を上にして遠藤先生は言った。
「じゃ、俺はこれで」
「おぅ、そろそろ授業も始まるし、早く行けよ」
再び一礼して大介は職員室を後にした。
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