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side.梵天丸





兄上に会いたいと思いだしたのはいちからだろう。










体のねつやいたみがひいて、やっとじゆうにうごけるようになった。
とりあえずみんなに会いに行こうとへやから出れば、ジク丸のへやから父上に手をひかれたジク丸が出てきた。



「父上!ジク丸!!」



ひさしぶりに大きな声を出して、少しあたまがクラクラした。
でもオレの声に気づいたらしいジク丸が、オレの方に体をむけた。けど次の一歩は、父上に止められた。


どうしたのだろうか。
何かだいじなごようがあったかもしれない。
おこられるのだろうか。



「……」

「父上……?」



ビクビクと父上の言葉をまってみたけど父上からの言葉はなく、大きなせなかをオレにむけた。
そのまま何も言わず、ジク丸の手をひいてろうかのおくへと歩いていってしまった。









「近寄らないで!!」

「母上……?」



父上とジク丸に感じたいわかんを何とかしたくて、母上のおへやをたずねた。
そんなオレをむかえたのは、いつものやさしい母上ではなかった。

いや、母上ではあった。
でも、それはオレの知っている母上じゃない。


オレを見るつめたい目。
おびえるように自分をだきしめる母上。



「追い出してちょうだい」

「――ッはなせ!!母上っ」



オレにせなかを向ける母上に、どうしてと叫びたかった。

何かわるいことをしてしまったのだろうか。
心配をかけすぎておこらせてしまったのだろうか。



「醜い……一つ目の化け物が……」

「――!?」



じょちゅうに手をひかれ母上のおへやからはなれてすぐ、小さく聞こえた母上の声。
その声とことばにオレの体はかたまった。


みにくい……?
オレは……おばけになってしまったのか……?
だから苦しかった?だから辛かった?
でも……今も感じるこの苦しさは、オレが生きているからじゃないの……?






あぁ、そうだ。
オレはさみしかったんだ。
母上からかわいがられ、ジク丸になつかれて、父上に気にかけてもらえて……みんなすぐそばにいてくれた。


でも、オレはそれが少しきゅうくつに感じた。


だからオレは、じゆうに歩きまわる兄上にあこがれた。
そしてそんな兄上からの、気まぐれのようなやさしさがすきだった。



兄上に会いたい。
ものしりな兄上ならこの苦しみの理由を知っているかもしれない。
兄上に会いたい。
おすがたを見たい。
声がききたい。
いっしょに、いたい。







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