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押し相撲


のんびり癖者男主×あほの子幸村





「うわぁ……」

「ちょっと、うわとか言わないでよ……」

「正直、ひくlevelだ」

「旦那もそれなりに傷付きやすい年頃なんだからやめて……」

「〜〜ッ煩いぞ佐助ぇッ!!」

「えぇえ俺様!?」



理不尽きわまりない真田幸村の叫び声に、大げさに嘆いて見せた猿飛佐助。
それを呆れた左目で睨む伊達政宗と、苦笑いする長曾我部元親。


教室の隅で騒ぐ彼らの周りは僅かに机が乱れ、惣菜パンの袋やら弁当箱やらが机と同じように乱雑に置かれていた。


騒がしい彼らを気にする様子もない、クラスメイト達は生暖かい視線を送るだけだった。



「お前weakすぎだろ…………押し相撲」

「そっ、そんなことないでござる!」



政宗の一言に勢いで反論するが、完全な負け惜しみにしか見えずハッキリ言ってしまえば哀れだった。


幸村は彼らに全敗していた。
しかも気を使った佐助がばれないように手を抜いて挑んだにも関わらず、その佐助にすら負けてしまうほど。

まさに完敗の二文字につきる。



「まぁ、あんだけ考えなしにやってりゃあそうなるだろうなぁ……」

「うぅ……」

「向いてねぇんだ、大人しく諦めな」

「うぐっ」



政宗の容赦のない言葉に、僅かながらショックを受けたらしいがくりと肩を落としてしまった。

それを見て深く溜息を溢す佐助。
その背中にはどことなく哀愁が漂っていた。



「竜の旦那……八つ当たりされるの俺様なんですけど……」

「知るか」

「機嫌わりぃなぁ、政宗」



ばっさり切り捨てた政宗に元親が呟けば、かっと目を見開き持っていたパックジュースを握りしめた。
中身は空だったらしく何も飛び出さなかったが、握りしめられたパックの限界――パックってそんな形になる……?――を見せ付けられ冷や汗が滲む。



「そりゃあこんだけ押し相撲に付き合わされたら不機嫌にもなんだろうが!!」

「……ごめんなさい」



幸村にも負けない大声で叫んだ政宗に、申し訳なさそうに頭を下げる佐助。


そう、彼らは既に何十回も対戦していた。

そして幸村は見事なまでに敗退を重ねていた。

クラスメイトが政宗の大声にも動揺しなかったのは、今に至るまで似たようなやり取りを何度かしていたためでもある。



「もうオレはやんねーからな!」

「か、勝ち逃げすると申すのか!」

「勝ち逃げもくそもあるか!Crassitudeが!!」

「く、くら……?〜〜意味が分からないでござる!!」

「大馬鹿野郎っつたんだよ、you see!?」

「ば、バカとは何でござるかバカとは!!」

「……そのまんまの意味だろ」

「……旦那」

「ん、何か荒れてんねー」



本格的に喧嘩腰の二人と、呆れた様子の二人。
その呆れている方の二人組に話しかけるのんびりとした声。

二人がそろって振り返れば欠伸を噛み殺している山田大和の姿。

完全に寝起き感全開の今現在昼休みの終盤だったりする。



「よぉ、大和。さぼりか?」

「いや、ちょっと野暮用。それよりあれどうしたの?」

「旦那が押し相撲弱くて……」

「あ、はい。分かった」



全ていい終わる前に想像がついたらしい大和は、佐助の言葉を遮り未だ怒鳴り合っている二人へと近付いた。



「真田、俺と勝負しよう」

「っ大和殿!」

「、何だ大和か、驚かすんじゃねーよ……」

「ごめんごめん。ほらほら筋肉ばかの政宗と元親よりは余裕でしょ」



「オレは脳筋じゃねぇ!」と叫ぶ政宗を無視し、足を揃え両手を前に構える大和。

それに慌てて正面で構える幸村。

さっきまで散々相手にされなかった幸村は嬉しそうに後ろ髪を揺らした。



「じゃあ、はっけよーいのこった」

「うおおおおッ」



のんびりとした掛け声とともに相も変わらず力押しで挑む幸村。

しかし幸村が声を上げ手が触れ合う直前、大和は手を後ろへ引っ込めた。



「お、おお……!?」



幸村の手はそれを追うように脇を通り抜け、バランスの崩れた体は必然的に大和へと傾きぶつかった。

身長差もあり、正面から幸村が抱き着く形で止まった。

びくりと硬直してしまった幸村の尻尾のような襟足をさらりと撫で、大和は肩を揺らして笑う。



「俺の勝ちだ」



呆然と目を見開き固まっていた幸村だが、頭から降る大和の声を受けると徐々に顔に赤みが増していく。

それに気付いたらしい政宗達含むクラスメイトは、慌てて耳を押さえ一斉に音を遮断した。



「〜〜っ破廉恥でござるうぅうぅうぅぅうぅううう!!!!」



今までの比ではない大声とともに、全力で教室から走り去ってしまった幸村。

それを追うように昼休みの終了を告げるベルがなった。



「最初っからこうしといたらよかったのに」

「……て、ちょっと大丈夫なの?旦那の声直撃したでしょ?」



笑顔で告げる大和に、慌てて詰め寄る佐助。

それを見て「あぁ、大丈夫」と笑顔のまま言ってのける大和は、そのまま手を耳に持っていき何かを引っこ抜いた。



「み、耳栓……?」

「やー、何かしたほうがいい気がしたから」

「wait、じゃあ今までどうやってtalkしてた」

「そんなの読唇術使えば分かるじゃん」



「ふつーでしょ?」と首を傾げる大和に、三人とクラスメイト達の顔が引きつる。



「いやいや……いやいやいやいや!!まずなんで耳栓!?イヤホンしてこいよ!!後、読唇術なんてできねぇから!!」



他の皆の心情を代弁するかのように声をあらげる元親。

しかしそれを気にもとめず、先程入ってきた教室のドアの前に立つ。



「……何してんの?」

「いや、真田が来そうな気がするから……」



「嫌がらせしよーっと」と心底楽しそうに言う大和に、もう誰も何も言わなかった。





その数分後、戻って来た幸村がもう一度大和の腕に戻ったのを、誰も驚かず僅かに哀れみの込められた視線だけを向けていた。









――――――……
|д゚)主は英語が壊滅してるので政宗の英語は某サイト様に任せっきりです。






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