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世界の平和は甘い物を食べる事から始まるのだ
冬の始まりはみかんと共に
















ある朝寒さに目を覚ますと、枕元にこれでもかというほどみかんの箱がつんであった


『銀ちゃん…?みかん?』
「あーそれ今日の仕事。配達。」
『…ふーん?じゃおやす』
「お前もやんだよ!起きろほら!」
『布団引っ張っちゃやぁぁ〜〜』


そんな感じでしぶしぶ着替え、とりあえず箱を外に出した


『さぶい……あれ?神楽ちゃんと新八は?』
「先にもちの配達行ったぞ」
『なるほど鏡餅ね』






────





それから私達は箱をカートの様な物に乗せ、押しながら家に届ける事にした


「バイクだったらちゃーっと終わるんだけどな〜」
『じゃあ私家で待ってるからバイクで行く?』
「お前1人だけサボるのなんてずるいぞ〜」
『冗談だよ、冗談っ。』


しばらく歩くと、温かいお茶が売っている自動販売機を見つけた


『あ!お茶!!』
「はい俺が先!」
『銀ちゃんずるい〜っ』


お金を持ち歩いているのは銀ちゃんだからしょうがないんだけど。
私もお釣で買おうとボタンを押すと、何も起こらなかった

『…え、なんで?』
「あ?売り切れみたいだな。俺ので」
『えぇぇ〜…銀ちゃぁん…』
「う…わかったよ!ほら!」
『!ありがとう〜っ!!』
「半分だけだかんな!」


銀ちゃんに貰ったお茶を飲み一息つくと、そこは高そうなお屋敷があった


『お屋敷?…あ、ここ配達の所だ』
「ホントだ。ずいぶん歩いたんじゃねーか?」
『うん…じゃあ押すね?』


そのお屋敷の大きさに若干緊張しつつも私はチャイムを押した
しばらくすると目の前の大きな扉が開け放たれた


『あああの、みかんをお届けに』
「あら…もしかして万事屋さん?」
「そうですね」
「あらあら、こんなに雪を被って…中にお入りなさい」
『でも…』
「いいのよ、ほら」
「じゃあお言葉に甘えて」


中からでてきたのは、お登勢さんぐらいの綺麗な叔母さんだった。
図々しく入るのもどんなもんかと思ったが、断りにくい雰囲気になってしまい、申し訳ないが私達は家に上がらせて貰った


『すみませんお邪魔します…』
「嬉しいわ、私独り身なもんでね」
『あなたにみかんを贈った方は?』
「娘よ。遠くに行ってしまってね…」
『そうなんですか…』
「だから今娘が帰って来たみたいでなんだか嬉しいの」
『!』
「それでね…」


それからしばらく話をし、別れを言って私達は帰ってきた

―――…


『ねぇ銀ちゃん?』
「ん〜?」


銀ちゃんは私が言おうとしてる事がわかるのかわからないのか知らないが、なんともあいまいな返事をした


『銀ちゃん家族は?』
「…いねーよ」
『……私も』


その時ぴゅうっと木枯らしが吹き、わたし達の手を冷やした
だから私は両手を口に当ててはーっと息を吹き掛けた。息は白かった
すると銀ちゃんが私の左手を握って着物の中にいれてくれた


『わっ…』
「銀さんの特別大サービスだ。」


冷えきった体も寂しくなった心も、少しだけ暖かくなった気がした。
悲しい事を忘れる事は無くても嬉しい事を重ねたら…今までの悲しい事が100%でも、後に嬉しい事が99%分起こったとしたら、悲しみは1%になるよね?

銀ちゃんに何があったのかはわからないけど、その時少しだけ心が見えた気がしたんだ

すると遠くの方から神楽ちゃんと新八の声がした


『あ!神楽ちゃんと新八!』
「……今はお前らが家族、かもな」
『え?なに?』
「なんでもねーよ、ほら行くぞ」


そう言って銀ちゃんはさっきよりも強く私の手を握り直して、歩き出した。


そんな、冬の一日。















『銀ちゃんの手あったか〜い…』
「まぁな。」

(ドキドキしてるから、なんて)(言えない、言わない)





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