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世界の平和は甘い物を食べる事から始まるのだ
今日の深夜は薔薇色で
















「華様、どちらの髪飾りがよろしいですか?」
『どっちもやだ』
「…かしこまりました」


今日であれから五日目。
そう、結婚式当日だ。
結婚式は夜らしく(きっと鬼だからだ!)、私は時間ギリギリまで最後の悪足掻きをしていた。


「華殿」
『…将軍様』


正直めんどくさいとさえ思う。別に結婚式とかしなくてもいいのに。そんなことしなくてももう私は逃げも隠れもしないから。
あ、そういえばひとつ気になってた事があったんだ
私は鬼に聞いた


『前、私に子供産めって言いましたよね?』
「言った。」
『思ったんですけど私にはなんの力も無いです。あるって言ってもこの腕輪ぐらいで…』
「それだ。」
『だってこれはたかだか腕輪でしょ?私とは何も』
「その腕輪は着用している本人と徐々に一体化し、その本人は腕輪なくしても力を使う事が出来る様になる。ただし…」


そこまで言いかけたところで鬼は女中に呼ばれ部屋へ戻って行った。
それにしても、ただしってなんだろう…なにかその代わりに悪い事があるって事だよね
ただし…ただし…ただし…
小学校の時に同じクラスで忠くんっていたな
あれ、忠志だっけ。

どうでもいいことを思いだし始めてしまったが気付けば6時。
始まるのは7時からだからそろそろ本当に用意をしなくちゃいけない。


『はぁ…やるしかないか。』


みんなのことをあまり思い出さない様になった自分をよくやったと思うのと同時に寂しくなった。
あーもう終わった事はしょうがないんだ。
私は着物風ドレス(ドレス風着物?)に着替え会場へ向かった





*****





『(うっわあ…)』


会場に着き舞台に上がると、結婚式を見に来たお偉いさんや江戸の人、真選組のみんなもいた。
チラッと見渡すと、悲しい顔でこっちを見るお登勢さんやキャサリンさん、お妙さんが見えたけど、私は必死に見なかった事にした。
だけどやっぱりその中にやっぱり沖田くんもトシさんも万事屋メンバーもいなかった。

そりゃそうか、あんな自分勝手な事行っちゃったもん。
たかが結婚式でも見に来たくなんてないよね


「これより徳川家結納式を執り行います。」


その言葉を皮切りに結婚式が始まった。偉い人のお祝いの言葉を何回も聞いて眠くなったけど我慢、我慢。


「それでは、結納の儀式を。」
『あ、指出せばいいですか』
「首」
『あぁ、首か。…首!?なんで!?』
「儀式だからだ」


首って、吸血鬼だよね!?
あ、でもここに来てから対外常識は通じてないんだっけ。あはは…

その時光に反射した将軍様の顔がまるで般若の面の様で、怖いと感じた。

でも受け入れるしかなくて。
私は衿を引っ張り首を出した。


『っ………』
「それでは儀式を始めます。」

「これで我は力を…」


鬼の顔が私の顔に近付いてくるのが目を閉じていても分かった。
トキメキとは違うドキドキで、体がカッと熱くなった

───…その時

ドガッ


「「「「「「ちょっと待ったァァァ!!!」」」」」


「なっ何奴!?!?」

「キジです」
「ワンコネ!」
「ゴリ…じゃない!つかなんで俺だけノーコスプレ!?」
「桃太郎でーす。ちょっくら鬼退治に来ましたァ!」
「それから。」
「姫様を奪い返しにきやした。」

『………へ?』


唖然だった。言うなれば開いた口が塞がらない。
会場もシーンとしている中、真選組が立ち上がった。


「テメェらァ!!鬼を確保だ!!」


そのとっつぁんの掛け声と共に真選組の人達が私達…いや、鬼の所へ走って来た。
もちろん鬼は逃げようとするわけで。
私は鬼を掴まえようと後ろを向くと、月明りに照らされた桃太郎…いや、銀ちゃんがいた


「待ちな。」
「どけェ!!!」
「お前、華がどれだけ傷付けたかわかってんのか?悩んで苦しんで痛みに耐えて…」
「知るか。俺はただこの女の力が手に入ればそれでよかったんだ」
「あ?」
「力が欲しかったんだよ!ただそれだけだ」
「ふざけんな!!………華の受けた痛み、思い知れ…成敗致す。いけ神楽新八!」
「うぉりゃあああ!」「覚悟するネェェ!」

『みんな…』


慌てふためく会場、逃げる参列者。その中で闘うみんな。
すると鬼が持っていた刃物が私に向けられた。


「この女がどうなってもいいのか!?」
「くっ…ベタベタな展開!」

「ぐぁっ!」
『近藤さん!トシさん!』


鬼を殴り取り押さえたのは、近藤さんとトシさんだった。
どうして?どうして私のために?
どうやらその気持ちがみんなに伝わったらしく、みんながふっと笑った。


「「「「「華が大切だから」」」」」
『みっ…みんな…っ』
「いい加減にしろ!」


そう言って鬼がもう一本の刀で私を斬ろうとした時、私の前に影が現れた。そしてその刀を片手で受け止めた


『っ!!!………お、きたくん!?!?』
「華にはもう傷ひとつつけさせねェ。」


そしてまた乱闘が始まった。
何とかするにも何も手が出せなくて悔しく思っていると、私の手を沖田くんが握った。


「逃げまさァ」
『!?…でも!』
「…これが俺の役目。それにあいつらなら大丈夫でィ。」


私は沖田くんの言葉を信じて手を引かれるままに走り出した。





〜〜〜〜〜





しばらく走ると、ようやく見慣れた町並みに入って来た。そこでようやく私達は走るのをやめて歩いた


『沖田く…っ!手!!』
「あ?あー、きっとさっきでさァ」


さっき…私をかばって刀を受け止めた時だ。
私は沖田くんに握られている手の反対の手で傷付いた沖田くんの手を持ち上げた


『………また、助けてもらっちゃったね』
「華…」
『ごめん、ごめんねっ。今治……』
「治さなくていい。」
『え?でも』
「…これは、華を守った証って事で。どうでィ?」
『っ…』
「わ!泣かないで下せェよ!」


つい泣いてしまった私を沖田くんが抱き締めてくれた


「あー//」
『あり、がと』

「…このまま俺のものにしちまいてェや」

『!…もー、ふふふっ。』
「何笑ってんでィ」
『イタっ…だって、こうしてられることが嬉しくて』
「これからだってずっといられる。」『だけど』
「大丈夫でさァ!心配すんなィ」


かっこいい、素直にそう思った。きっと大丈夫、沖田くんがそう言うんだもん。


『……あ』
「どうしやした」
『私…そういえばキス、されたんだよね』
「そうなんですかィ!?!?」
『…ファースト、キス。』
「ファーストキスゥゥゥ!?!?!?…だ、大丈夫でさァ。華のファーストキスは将軍様じゃありやせんから」
『そうなの!?本当!?!?よかった……え。でもじゃあ誰?』
「…それは(旦那だなんて口が裂けても言えない)」


誰なんだろう?将軍様じゃないならいいけど、それでも気になる。
すると沖田くんが私の肩に手を置いた


『…?』
「消毒、でさァ」


沖田くんが目を閉じたから私も目を閉じた。いつもだったら何言ってるのって言うんだけど、今は不思議と嫌じゃなかった。


『おきたく…』
「総悟」
『そ、ご…』


吐息がかかる距離まで近付いた時、私の緊張はピークだった。
その時


「あーーーっ!!!」


『っ!銀ちゃん!みんな!』
「チッ」


後ろから声がして振り返ると、みんながいた。
溢れそうになる涙を堪えていると、銀ちゃんがものすごいスピードで走ってきて私を抱き締めた


「華になにやってんだーっ!」
『ふあ!ぎんちゃん!苦し、』
「アレに決まってんだろィ。キ…」
「ダメー!そんなの許しませんー!……今まで大丈夫だったか?華。」
『…うん//はは…。』


神楽ちゃんと新八とトシさんと近藤さんもきて、私は自然に笑顔になった。
あの時みた夢と同じ、平凡で幸せな日。
帰ってこれたと、やっと実感出来た。

そうそう、と銀ちゃんが言った。
みんなでコソコソ話を始めて私だけ疎外感…すると、神楽ちゃんが大きく息を吸った


「せーのぉ!」

「「「「「「おかえり!」」」」」」

『!………ただいまっ』


今、私世界で一番幸せだと思う。
帰って、おかえりって言ってくれる人がいて。
私にはこれが一番の幸せなんだ。


───こうして[華誘拐事件](神楽ちゃん命名)は私達らしく派手に幕を閉じたのだった。











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