異人乃戀-コトビトノコイ- 勉学 二 志瑯の元に行くと言い、志瑯の部屋の前に来たものの、湖阿はなかなか入ることが出来なかった。 久しぶりに会うため、どんな顔をしたらいいのかが分からない。 そもそも部屋に居るのだろうか?と行くのを止めようかとも思った。 うじうじしているのも自分らしくない。と、湖阿は声を掛けてみた。 「志瑯ー?」 声がするのを待ったが、いくら待っても返事はない。また今日も咲蓮たちと会議をしているのだろう。 しかし、今は昼食の時間帯だ。いつもなら午前の会議は昼には終わるのだが、今日は違うのだろう。 「いっつもなら部屋に戻って昼ご飯食べてるのに……」 ため息をつくと、湖阿は部屋に帰ろうと歩き出した。 また一人で解読しなければならないと思うと、ため息が出そうになる。 この世界に来て何回ため息をついただろうか。元の世界に居るときの一年分はこの短期間にため息をついている。 「おお!」 後ろから大声が聞こえ、驚いて振り向くと深紫色の髪をさた男が湖阿を指さして、口を開けて立っていた。 男は手に持っていた本を猛スピードで開くと、湖阿と本を交互に見た。 「やっぱりか!君はあっちの世界の女子高生という人種の人だね!」 男は眼鏡をかけ、再度湖阿を上から下までじっくり見た。 この世界にきてから見たことの無い人物だったため、湖阿も見返したが、じろじろ見られいい加減腹がたってきた。 「ちょっと、あんた誰……」 湖阿が口を開くと、男は湖阿の隣に移動し湖阿の肩に腕を回すと、開いたページを湖阿に見せた。 「うん、本当にこの資料と同じだ」 「……セーラー服。何で本に描いてあるの?」 男は本を閉じると表紙を見せた。表紙には手書きで題名か何かが書いてあるのだが、読めない。 「……何て書いてあるの」 「もしかして……読めないのかい?」 男が驚いた顔をすると、湖阿は肩に回されていた腕を振り払った。 「すぐに読めるわけないじゃない。元の世界の文字と全然違ったんだから」 初めは読めそうだと思ったのだが、いざ読もうと思うとほとんど分からなかった。 読めそうなところもあったのだが、内容は理解出来なかった。 「あっちの世界から来た者は満足に字が読めないのも付け足すか」 「なんか馬鹿にしてるみたいで腹立つんだけど」 「でも、本当だろう?救世主殿」 嘲笑を含む笑みに、湖阿は本気で殴ろうかと思った。 退進 [戻る] |