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異人乃戀-コトビトノコイ-
味方
「それか……術が効きにくい体質だから、じゃないですか?」
 陸丞が夜杜に問うと、夜杜は頷いた。
「それもあるかもしれないね。四つの印を持っているんだから何かしらの力はあるはず」
 それだけ湖阿は特別であり、裏倭の世界に選ばれた存在だということだ。
 特別な存在なのだから、他人に守ってもらうだけでは守りきれない。
「完全に効かないわけじゃないことが救いだね」
 もし、完全に術が効かなければ、治癒の術すら効かなくなる。もし怪我をしたら、軽い怪我でも重い怪我でも痛みと闘わなければならない。最悪の場合、死に繋がるのだ。
 武人のように身体を鍛えているわけでもなく、さらに平和な国に生まれた湖阿にはそれは過酷すぎる。
「完全に効かないわけじゃないだけだから、治癒の術を使っても一回で良くて人の半分だろうね」
「怪我をさせるなということですね?」
 湖阿を介抱しながら咲蘭が問うと、夜杜はもちろん、と頷いた。
「けど、志瑯……君は救世主を守ろうとしなくていい。さーて、ま、後は頑張れ」
 志瑯が意見する暇も与えず、夜杜は消えてしまった。自分の身だけを護れと言いたいのだろうか?
 しかし、夜杜が救世主だけを強調したのには何か意味があるのかもしれない。
 志瑯は気を失っている湖阿を抱き上げると、部屋を出ようとした。が、咲蓮に呼び止められた。
「志瑯様はここに居てください。朱雀の嫡子の話を聞かなければなりません」
「そうだな。鷹宗、お前が部屋にお連れしろ」
 鷹成に言われ、嫌そうな顔をした鷹宗だが、仕方なく湖阿を志瑯から受け取ると連れていった。
「朱雀の嫡子……」
「オレの名前は珮護だからな。青龍の……うーん……志瑯」
 志瑯が呼び捨てにされたことに少し腹が立ったが、悪意の無い無邪気な笑顔に皆は怒る気にならなかった。
「ああ、志瑯でいい。私はもう王では無い」
 あっさりと言った志瑯だが、何も思っていないわけではない。
 感情を表に出さないが、悔しさに似た感情を持っていた。
「その言葉……鷹宗の前では言わないでやってください」
 誰よりも志瑯に忠誠を誓っている鷹宗がその言葉を聞けば、どれだけ落胆し、悲しむだろうか?
 志瑯は分かったと言うと、珮護を見た。
「えーと、まぁ……オレは白虎がどんな力を持っていようと、あいつらには従え無い」
 人としての心を持たない白虎族に従いたくない者だってたくさんいる。
 白虎族の中にもいるだろう。しかし、圧倒的な強さから従わないわけにはいかなくなっている。
 朱雀族は既に白虎族の支配下。逆らうのは並大抵の決意ではできない。

退
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