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異人乃戀-コトビトノコイ-
鷹宗
 言い終えた湖阿はふと我にかえり、少し後悔しかけたが、鷹宗の言動はあの言葉だけでは足りない位だ。と思い直した。
 しかし、世界が違えば自分の常識など通じないということは分かっていた。
 この裏倭で無事に生きる為には裏倭の常識に従うしかない。自分の常識ではとても生きていけない世界。
 人々の戦いがある。平和ではない世界なのだ。
 自分の何気なくした軽はずみな行動が命とりだということをつい先程湖阿は感じた。
 しかし、譲れないものも有る。
 人として大切なものはどこの世界でも人間がいる限り同じだと湖阿は信じている。
 同じ人なのに、性別などの少しの違いで優性だと勘違いし、劣性な人々を見下す。
 そんなことはあってはいけない。あるべきではないのだ。
 湖阿の言葉に気圧された鷹宗は、少しの間静止していたが、直ぐに荒々しく音をたてて立ち上がった。
「てめえ……!」
「な、なによ。本当の事言っただけじゃない!」
 憤慨する鷹宗に湖阿はますます引けなくなった。負けず嫌いなのだ。
 しかし、刀を持った武士に何も力を持たない女が敵うはずもない。
 湖阿は立ち上がると、逃げた。素早く鷹宗の脇を擦り抜け、廊下に出ると、無我夢中で走り出した。
 力で敵わないなら、逃げるしかない。
 鷹宗が追い掛けてくる荒い足音が聞こえ、さらに足を速める。
 走っている最中、湖阿の脳裏に二つの疑問が浮かんだ。
 一つは、救世主なのに何故逃げなければいけないのか、ということ。
 そしてもう一つは、鷹宗とは一体、何者なのかということ。
 王には当然の事ながら忠誠を誓い、頭を下げていたが、神族である夜杜に対する対応は明らかにおかしかった。
 神も敬愛すべきではないだろうか?湖阿は裏倭の人間では無いので、夜杜の事を神と崇めるのは難しい。
 湖阿の目には、夜杜は志瑯達とはなんら変わりの無い人に見える。実際に、外見は変わらない。
 裏倭の人にもそれは同じだった。しかし、夜杜には神族と一目で分かる高貴さがある。
 高貴さと威圧感を兼ね備えた神族と一歩も引かずに話す事が出来るのは、王という地位にいる人しかいない。もしくは、余程の命知らずで鈍感な人だろう。
 普通は神族と目が合うだけで、しばし思考が途切れてしまう妙な感覚に捕われる。
 夜杜を正面から見る鷹宗に夜杜は、面白がり、楽しんでいるのだ。
 それも夜杜への明らかにおかしい対応の理由だろう。

退
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