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異人乃戀-コトビトノコイ-
勉学十五
 鷹宗に案内されて着いたのは書庫だった。多くの書物が保管されている書庫を学者らしく咏は塒(ねぐら)兼仕事場にしている。
 
「凄い本の数……。」
 学校の図書館とは比べものにならないほどの書物の量に、湖阿は唖然とした。
 玄武族の書物庫と学校では比べることはできないが。さらに、咏が城から持ってきた書物も合わさるとかなりの量になる。棚に収まりきらないくらいに。

「咏はここにいる」
 鷹宗はそう言うと、部屋を出ていく。
「あ、もう行くの?」
「あいつと極力会いたくないからな……」
 鷹宗は眉間に皺を寄せると、行ってしまった。
 湖阿はため息をつくと、再度辺りを見回した。湖阿は図書館が好きだった。友達と騒ぐのもいいが、時には静かにじっくり本を読みたいこともある。
 本を読むのが好きな湖阿にとって、癒やしの時間。
 文字が読めれば、この書物庫の本を読めるのに。と湖阿はうなだれた。

「湖阿」
「ひいっ」
 突然肩を叩かれ、湖阿は手を振り払って後ずさった。気配が全くしなかった。ここにいるのは湖阿一人だけのような静けさだったのだが……。
「そんなに驚かれるとは心外だ。まるで幽霊をみたような反応じゃないか」
「幽霊よりタチ悪そうだけどね」
 湖阿は気持ちを落ち着けるために深呼吸をすると、咏をみた。そんな湖阿を面白そうに見る咏。

「……さ、奥にどうぞ奥方」
 咏は湖阿の手をとると、書物庫の奥へと歩いていく。意外と奥行きがあることに驚き、興奮していた湖阿は咏の言葉への反応に遅れてしまった。
「は?誰が誰の奥方よ」
 誰の妻になったつもりはない。湖阿自身は気にしてはいないが、今まで恋人もいないのだ。
「ん?……冗談に決まってるだろ」
 悪質な冗談に、湖阿は一発殴ろうかと思ったがやめた。ここは咏の場所。何をされるか分かったものではない。



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あきゅろす。
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