Novel〜APH〜
思春期『米+仏』
「悪いね、来て貰って」
「ん〜?大丈夫だけど何だアメリカ、急に俺を食事に誘うなんて。お兄さんにときめいているのか?」
「君なんかになるわけないだろう」
即座に変態のうわごとを打ち返してやる。
「そうじゃなくて聞きたい事があるんだけどさぁ…」
「なんだ?」
「イギリスの小さい頃ってどんなんだったんだい?」
そう、なんで俺がフランスを誘ったかというと。
この前ちょっとしたアクシデントというか、イギリスの自業自得で彼が小さくなってしまった時。
俺とイギリスは一緒に過ごしたわけだが、俺の想像していたものを遥かに上回る……その、なんというか……不憫ぶりに驚いたのだ。
イギリスは俺とは違い島国だが、兄達が多くいるのでもっと楽しく暖かい生活だったのだとずっと思っていた。
確かに兄達とは仲があまり良くない事は知ったが、それも独立後のつい最近の事だ。
「イギリスの小さい頃ね〜」
「この前、イギリスが小さくなっただろ?俺その時初めて知ってさ……彼いつもあんまり自分の事話さないし」
まぁ、半分は俺が自分のことばかり話しはじめてしまうのも原因に入るのだが。
あと幻覚の話を彼が始めるのも原因だと俺は思う。
「あいつ自身、あんまり昔を思い出したくないんじゃないの?」
「そのくせ物とかは捨てられない人だよ?倉庫なんかには大英帝国時代の物とか綺麗に残ってたし」
多分もっと昔の物もあるのだろうけれど俺の興味心よりも残念ながら諦めの心の方が強かった。
掃除はされていて綺麗だったが、何にせよ時代が長いわけである量が膨大過ぎてそれを一つ一つ見て探すなんて、とてもじゃないがするきになれなかった。
とまぁ、その話は置いといて。
今俺が気になっているのはイギリスの小さい頃だ。
「イギリスねぇ、性格は今と変わらずだったなぁ」
「小さい頃からあのツンデレかい?」
「素直に喜べないっていうの?なんかしら裏がないかって警戒が激しかったな。今と変わらねぇ」
まさか、あのフランスへの態度がそんなにも昔から構成されていたとは。
何百年経っても変わらないというのはある意味すごいのではないか。
「小っちゃい頃からそんな警戒だなんて…………まさか君、手を出したりなんてしてないよな?」
俺はじっとフランスを睨む。
なんせ、老若男女問わず年がら年中セクハラ行為をあちこちに働かしているような男だ。
前にもイギリスに対して「顔はいいんだけどな」などとざれごとを漏らしていたというのは知っている。
そんなヤツがイギリスに手を出していないなんてあるだろうか。
「いやいや!!ちょっ、アメリカ!そんな犯罪者みたいな目付きでお兄さんを見ないでよ!!………そ、そりゃあ……スエズ運河の件ではちょっと……あれとか…だったけ───」
「あったんだね」
にっこりと俺はできるだけ優しく微笑む。
目の前のフランスの表情が先程よりもこわばっている所を見ると、どうやらちゃんと笑えてはいないようだけれど。
「あ!アメリカ!?マジ勘弁だって!あとその笑い方マジでお前の育ての親に似てて恐い!!」
どうやらフランスは本気で恐いようだが、そんなのは知ったこっちゃない。
「当たり前だろ?イギリス直伝だからね」
「スイマセン、スイマセン本当命だけは勘弁を。エッフェル塔潰すのはやめて」
フランスはしきりに謝り始める。
まぁ、過去のことは今更だし最後までやったわけではなく、あくまで未遂なので今回は許した。
今回は。
今回はね?
でも怒りの感情の収まりがつかないので、仕方なくフランスに一発回し蹴りを叩き込む。
え?何で殴らなかったかって?
腕よりも足の方が力は強いんだぞ!
そうイギリスが言ってたからね、まったくなんて親だろうね。
「で、どんななんだい?」
腹を抱えてふるふると痛みに耐えているフランスに容赦なく聞きたてる。
痛い、痛い、あの蹴りはない。容赦の欠片もない。一瞬イギリスが見えた。とかぶつぶつ言いながらもフランスは話してくれた。
やっぱり、話の中の実際のイギリスは、俺の想像と全然違った。
「ま、結局あいつも寂しかったわけよ」
「そうか…」
自身の体験があったからこそ、俺の事を大切にしてくれていた。
同じ思いをさせたくなかったから。
それなのに俺はイギリスを裏切ってしまったのか。
わかっていたつもりだったけれど改めてまた考えると…………
「まぁ、気を落とすなよ。」
「そうだろう……ね」
明日イギリスに会ったら素直になってあげてもいいかな。
そう呟くと、「そりゃあ、泣いて喜ぶだろうな」とフランスに言われた。
何か、まるで俺が反抗期の子供みたいなんだぞ!
子供扱いは嫌だけど、イギリスにたまには優しくしなきゃかな。
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