Novel〜APH〜
来訪者「海+英」
「仕方ないから来てやったのですよッ……」
アポも勿論なしにやってきた小さい来訪者はそう言った。
「……お前何しに来たんだよ……」
いつものセーラー服にいつもの帽子でそいつ…いやシーランドはやって来た。
とりあえずシーランドを家にあげる事にし、紅茶をいれてやった。
「ん〜、まぁまぁおいしいのですよ。イギリスの紅茶」
「まぁまぁってなんだよ!まったく……」
こいつは人がいれてやったもんにケチつけやがって。
失礼で我が儘なのはいつまでたっても直らない。
「それで、何でいきなり来たんだよ」
「む〜、パパもフィンも今仕事でいなくてシー君は暇なのですよ!だから仕方なくイギリスの野郎の所に来てやったのですよ」
人が連れ帰ってやろうとしても来ないくせに、どうしてこいつはと言いたくなるが、またうるさいですよ〜とでも言われそうなので堪えた。
「ったく、お前ってやつはも〜。部屋はそのまんまだからあそこを使えよ」
「わーい、なのですよ」
元気に部屋へと走っていく姿をみると、まだまだガキだなと思う。
あぁ見えてアイツだって結構寂しかったりするのだろうか。
本当は俺だってそばに置いてやっておきたいのだが。
アイツはそれを拒み続ける。
まぁ、一応こうやって部屋はそのままにしてやってるが。
「おい!シーランド!何か食べたいもんあるかぁ?」
「シー君はハンバーグが食べたいのですよ〜」
俺の料理はなぜかみな口を合わせて不味いと言う。
特に髭野郎とかKYメタボとか。
でもこいつは文句を言いながらもちゃんと食べる。
それがちょっと嬉しかったりもする。
「い゛だぁ!!」
冷蔵庫の中身を確認し、材料を確かめているといつの間に出ていたのか庭からシーランドの声が聞こえた。
どうせまたはしゃぎすぎて転んだのだろう。
「大丈夫か!?」
「う〜」
案の定、出て行くと膝をすりむき涙目になっていた。
「はしゃぎすぎだ、ほら、立てるか?」
痛みが酷いらしく、なかなか立ち上がれないようなのでおぶって家に入ることにした。
「あんな所に小石があるのが悪いのですよ」
「石に文句言っても仕方ねぇだろ」
理不尽な子供らしい発言に笑ってしまう。
「バカにしたですね!」
「ははッ、バカになんかしてねぇよ」
ふくれっつらした顔が余計に子供っぽかった。
「シー君はもう立派な大人なのですよ!」
「じゃあ一人でホラー映画見れるようになったのか?」
それは……と口篭ると、シーランドは黙ってしまった。
「いっ…イギリスは生意気なのですよ!」
「あー、はいはい。足染みるから我慢しろよ」
消毒をし、ガーゼを当ててやる。
「こ、これくらい何ともないですよ」
そう言うとまた駆け出していく。
何度注意しても言う事は相変わらず聞かない。
こんなんで北欧のあいつ達の所にいるときは大丈夫なのだろうか。
とりあえず両膝に怪我はやめて欲しいので、また遊びに行こうとするシーランドに声をかけ、夕飯作りをする事にした。
「いいか?俺が炒めたら、玉葱入れるからよくこねるんだぞ」
「わかってますよ!」
フライパンに油をひき、あめいろになるまで玉葱を炒めたら少し冷ます。
その間もシーランドは待っていられず「早くするですよ〜」といい、足をバタつかせる。
「ちょっと待て!すぐにやったら火傷するだろ?」
冷めたので、肉の入ったボウルに入れてやる。
まだ幼い子供特有の小さな手で一生懸命にやろうとする姿はとても微笑ましい。
その間にも俺はスープを作り、味見をする。
まったく申し分のない味だ。
そりゃ、ムカつくけど髭野郎の着飾った料理と比べられてしまえば見劣りはするだろうが…
これのどこが兵器だ、まったく。
アルフレッドもいつも文句ばかり言う。
確にマク○ナルドはうまかったが…
火を消すとちょうどシーランドの声が飛んでくる。
「終わったのですよー!!」
「おう、ちゃんと出来てんじゃねえか」
「当たり前なのですよ!シー君は一人前の国家なのですから!」
腰に手をやり、ふんっとふんぞり返る。
まだまだ未熟な点は有り余る程ありが、少しは成長したかもしれない。
が、国として認めてやるわけにはいかない。
国になった所で、待っているのは辛いものばかりだ。
出来ればそんな思いをこいつにして欲しくもないし、させたくない。
「よし、じゃあハンバーグの形にするぞ」
出来あがったハンバーグとスープをランチョンマットの上に並べる。
「お腹がすいたのですよ〜」
そういいながらも俺と一緒にフォークを運び始める所を見ると、やはりこいつも成長したのだなと思う。
ちなみにハンバーグは少し焦がしてしまった……が、そんなに目立つ程今日は焦がさずに済んだ。………と俺は思う。
「おい、ちゃんと挨拶しなきゃだろ!」
早速食べ始めようとシーランドをすかさず止める。
怒られたシーランドは動きをぴたっと止め、むーとふてくされる。
「「いただきます」」
「むぐ………ハンバーグおいしいのですよ!!」
口の中にまだ入ったまま喋るなと言いたい所だが、シーランドのその言葉がすごく嬉しかった。
「……そっ、そうか!」
「ま、シー君がこねたのですから当たり前なのですよ」
にこにこと笑う顔を見ながら食べると、やはり自分が作っただけでないのもあり、とてもおいしく感じた。
「イギリスもシー君にこねて貰って感謝するですよ」
そんな事を言い出し、吹き出す。
それからシーランドの北欧での暮らしや、友達の話を聞いてやる。
それなりに楽しんでいるようで安心した。
国になる事は相変わらず諦めていないようで、あちこちに出向いているようなので、とりあえず南好きのアイツには気を付けるよう言っておいた。
こんな風に2人で食事をする日々。
毎日とは言わないが、今は少し浸りたいと思う。
仕方ないから今日は一緒に寝てやるか。
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