寮長の憂鬱 2 嗚呼・・・なんてこった。 部屋から出たら、居た。 おそらくこいつが俺の補佐になるヤツ。 だが、 「は?これ・・・?」 これ呼ばわりするのも無理ねえよ。今の俺の格好だとな。 「嘉田翔・・・」 ぼそっと呟いた。ぼそっと。 隆盛に言われたんだ。名前以外何も喋るなと。行動もするなと。何で俺隆盛に逆らえねえんだ・・・。 「うっわ〜・・・期待外れ」 ああそうだろうよ。俺でもそう言うわ。 俺は今ダサい黒のかつらをかぶって、黒縁眼鏡をしてる。しかも俯いてるから・・・完璧根暗だ。初対面での印象悪すぎだろ。 ・・・ああそうか。新手の苛めか。 「俺岡本海斗ね。あーなんかやる気まで削がれたわ。帰る。ちゃんと明日の朝からここ来るしそれで勘弁」 背がやたらデカイそいつは、一度千景に汚いものでも見るかのような視線を送った後、早々と出ていった。 「あ〜!良かったバレなかったね」 「ふふっ、なかなか良いアイデアでしょう?」 「危なかったな、いきなり来るとは・・・」 「・・・・・・」 「理事長が呼んだんじゃない?」 「しかしまさか岡本先輩だったとは・・・」 「すっかり忘れてたぜ」 ・・・あれか、俺は存在無視か。 「あっ!ごめん翔!」 いじけて俯いてたら、飛びついて来た莉央の不安げな顔が視界いっぱいに広がった。 翔ぅ〜っなんて泣きつかれて許さねえわけねえだろ・・・ったく。 「怒ってねえよ」 莉央には、な。 「で、何で俺がこんな格好しなきゃなんねえんだよ。説明しろ隆盛」 かつらと眼鏡を乱暴に掴んで隆盛が座るソファに投げる。勿論当たらねえようにしたからそこは大丈夫だ。 「何で、って。岡本先輩はかなり強敵だから・・・ううん。翔はこれずっと付けてた方が良いよ」 そしてまた投げ返される。 [*前へ][次へ#] [戻る] |