平凡くんの秘密の恋
3
「ぬぁぁにぃ?お前に彼氏!?」
ぶはっ!と声に出して本人を目の前に大の大人が笑う。
「失礼な。俺だって――・・・ミツ?」
雄也はかっこいい彼氏なんだぞってことを主張しようとしたら、いきなり隣から肩を掴まれた。そこには犬なんて言えない、真剣な顔をした男、ミツが居た。
「誰、ですか」
「はい?」
「どんな男ですかそいつは」
「み、ミツ?いったん落ち着こ――」
「先輩!俺、先輩を独占したいっ」
――ドサッ
えぇぇぇぇ!!!
俺ここに来てから何回叫んでんだろうな。
ってミツの目が怖ぇ・・・
いや俺男好きだから、イケメンミツくんに押し倒されたらもうどうにでもしてくだってかんじだけど。・・・俺には、雄也だけだから。
「ミツ」
「っ、ジロー先輩っ」
「バカ。目え閉じてみ」
ミツの瞼を下ろすように手をあてた。大人しくされるミツ。
「お前の平凡くん(俺)への感情は、恋愛感情なんかじゃねえだろ?彼氏が居るなんて知らなかったから驚いたんだろうな。そうだろ?恋人じゃなくても側に居れるから。な?」
手をどけたら、そこには苦い顔をしたミツ。いや、犬。どうしても納得出来ないみたいだ。
ま、俺を好きになってくれるような物好きは、雄也だけだから。勘違いさせたら可哀想だしな。
「・・・」
「お、おい。待てそこの2人。いや、平凡。お前に聞きてえことがある」
「何ですか」
まだミツは下を向いて何か考えてるみたい。
「一つ、先輩っつーことはお前が編入生だったのか?んでもう一つ、平凡のくせにいつの間にこの男前手懐けやがった」
「はぁ?」
とことん失礼なやつだなあんたは!
「俺が編入生の結城次郎です!チビだからってそんな・・・」
そう言うが早いか目の前の手帳を左右すり替える失礼な人。
・・・やっぱり間違ってたのかよ。
「それに!そんな言い方人聞き悪いじゃないですか!ミツとはさっき自然に仲良くなったばっかりです」
「じゃあ悪いことは言わねえ」
急に真剣になった声色。
「早えとこ離れろ」
失礼な人の言葉に、ミツも俺も瞬時に顔を上げた。
「嫌だ」
「どういう意味なんですか?」
ミツは断固として譲らないつもりらしい。
「この学園には顔が良いヤツや金持ちに、ファンクラブを過激化させた親衛隊ってのが出来る」
あ・・・雄也がチラッと言ってた気がする。うざいとかなんとか・・・
「良いか?親衛隊はとにかくうぜえ集団だ。抜け駆け禁止の暗黙の了解がある。その好きな相手に他の・・・つまり、お前みたいな取り柄の無え平凡が美形に近付いてみろ」
ゴクリと唾を飲んだ。
「暴力どころか強姦だって有り得る。俺が宣言してやる」
一気に青ざめたのは、言うまでもない。
「――新崎満、お前はその親衛隊が出来る因子だ」
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