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平凡くんの秘密の恋
いや新入生じゃねえし



「わー・・・」

「気持ちこもってないですね」

「いやだって、なんつーかもう疲れた」

「え!?」

うぃーん・・・と自動で開いたドアをくぐれば、白い眩しい壁と床。
スポーツバックを床に置いて、普段の生活とのあまりの違いに、わーと感情を込めることなく言ってしまった。

だって金持ち過ぎて、さ。

「大丈夫ですか?」

「何が?」

「だって、疲れたって・・・」

「ぷっ」

な、なに、お前は俺の召し使いか!姫様抱っこして運ぶわ、ちょっと疲れたって軽く言っただけで大事のように心配してくるなんて。

「ははっ、お前って面白いなー。誰にでもそうなの?」

「・・・先輩に、だけです」

「へ?」

あまりに小さく呟いたものだから、はっきりとは聞こえなかったけど。
え?俺だけって?

「な、んか・・・先輩は、大事にしたくなると、言うか。その分、甘えたくなる、と、言うか・・・」

「・・・・」


えぇぇぇぇ!!!


なにこの可愛いの!
顔真っ赤にして可愛いー!犬じゃん!完璧に犬だよ!

「わんちゃぁぁん」

「せ、先輩!?」

あああ、ヤバい!さっきから犬みたいだとは思ってたけど、まさしくリアル犬!あ、ちなみに俺、犬猫大好きだから!


「懐け、大いに懐けよミツわんちゃん」


頭を撫でて甘やかしてやろうとしても届かないし。抱き付くだけにしておいた。・・・もうちょっと小さいリアルわんちゃんが欲しかった。

わんちゃんミツは、照れ屋さん。だから顔を真っ赤にしながら、俺を抱き締めるだけだった。

んもう、可愛いんだ・か・らっ。

・・・さむっ。ミツに抱き締められて温かいはずなのに、さむっ。


「よ、よーし!さ、受け付け済まそうか」

ミツはまだ名残惜しそうだったが、離してくれた。そ、そんな恨めしそうな目しても揺るがねえぞ。躾も大事だもんな。

自動ドアを抜けてすぐ、正面に窓口があった。
さっきの声はここの人の声かもしれない。

またインターフォンがあったから、今度は俺が押した。


「はいはい」


その後窓口の隣に付いていた通用口が勝手に開いて、「入ってこい」と言われたのでミツと一緒に入った。

中には三人座れそうなソファが2つとローテーブルと、意外に広かった。そしてソファにだらける大の男。

「おーう、よく来た新入生ども」

いや、俺新入生じゃねえし!




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