平凡くんの秘密の恋
2
「え、どうやって入るか、って・・・」
ミツは躊躇わずにインターフォンを鳴らした。
普通そうするわな。なんか先輩のくせにこんなのも分からねえ俺って・・・情けない。
向こう側から男の声がして、暫くしたら、門が自動で横にスライドした。
さっすが、金かかってるなー。
「行きましょう、先輩」
「おう」
(雄也め・・・覚えてやがれぇぇ!)
門を越えると、両端に木々が生い茂る一本道が続いていた。
うん。到着地点が見えないって、どういうことかな?
「大丈夫ですか?」
「・・・ミツ、俺が倒れたらそれを越えていけよ」
俺の体力は例によって平凡だから、きっと体育会系のミツにとってはお荷物に違いねえ。
ミツはイヤイヤと首を振った。
「俺が先輩をお守りします!」
「はは、バーカ。戦じゃあるまいし、敵居ねえんだから守るなんて無理だろ」
むしろ敵は己の中に居る・・・ってか!
あ、すいません。
しかし、いつの間にかミツは口を尖らせてそっぽを向いていた。
「なになに、ミツくん拗ねた?」
「先輩酷いです・・・俺、守れますよ!」
スポーツバックを引ったくられる。
「は?」
次の瞬間、俺は浮遊感に目をきつく閉じた。
「ちょっ、待て!ミツ!下ろせえぇぇ!!」
「しっかり捕まっててくださいね!」
「ミツー!!」
お姫様だっこをされた俺は、その高さが怖くて怖くて、必死にミツのたくましい腕にしがみついていた。俺だって男だから多少重いと思う・・・
な、なんて男らしいんだお前は・・・犬の時(いつも)とのギャップが激しいぞ。
「はい、着きましたよ。ジロー先輩っ」
「あ、ああ・・・」
ミツのあまりの速さで伝わってきた振動の所為で、地面に立った今、足がふらふらする。
雄也にもお姫様だっこしてもらったこと無えのに!ミツのバカ!!
・・・え、考えたらこれって、ヤバいな。バレないようにしとこ。よしそうしよう!
「すんごいですねー」
「へ?おぉ、すんごいなー」
ミツに続いて見上げた寮は、すんーごい大きかった。首が痛くなるほど見上げなきゃいけない。
ここに、雄也が・・・
「せ、先輩?」
「ん?」
雄也のことを考えて緩んでしまった表情を元に戻す。
あちゃ・・・気持ち悪い顔見せちまったー。
「悪い、何もないからな」
「は、はぁ・・・」
よし!いざ、雄也に仕返しサプライズ計画開始!
あ、今のでお分かりの通り、雄也は俺がここに来てることすら知りません。
さっき電話した時来てること言おうとしたけど、仕返しで言わないことに決めました。
驚くかな・・・?
喜んでくれるかな?
今からわくわくして仕方ない。
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