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平凡くんの秘密の恋
マグロ信教


あれからクラスメートらしき人に、津永は連れて行かれてしまった。

今はマグロになるために食堂から寮に戻る途中の廊下。

「真人はサッカー部なんだ。すっげー男前にやりやがんの。ほんっとムカつくよなー」

ムカつくー。

なんて言えないんですけど。こんな凡人がそんなこと言って良いはずないでしょうよ。

「ジロー、あのさ・・・」

ん?

急にトーンを落として呟くように言った健太郎。真面目な話かと思って、隣に並ぶ相手の顔を見た。

「ジローの彼氏って、だれ?」

「え?」

「何で教えてくれねえんだよ」

あまりに真剣に言うものだから、驚いて歩みを止めてしまった。俺と対照的に歩を進めてしまった健太郎は、そのまま俺の進路を遮るように前に出て視線を真っ直ぐ見据えてくる。

これは茶化せない。そう思った。

「いや・・・俺さ、その彼氏にナイショでこの学園に入ってきたから、あんまり名前とか言いたくなくて・・・」

「何か秘密にしなきゃだめな理由とかあるのか?」

「・・・と言うと?」

「例えば、浮気調査とか」

急に不安げに低姿勢になった健太郎に何事かと思えば、心配掛けてしまったみたいだ。

ちょっとおかしくて笑ってしまった。

「ごめん。別に深い理由はないんだ。ただの意地悪計画」

こんな理由だと怒られるかな。たしかに今となってはどうでも良い気もするけど、たまにはサプライズとかも必要だよな。
でも、今の健太郎の言葉、使えるかもしれない。

浮気調査。

雄也はきっとここでもおモテになるんでしょうね。
別に愛を疑うわけじゃないけどさ・・・たまに不安にはなるよな。かっこ良いし、優しいし(次郎限定)、金持ちだし。


 ――バシッ


「なんだよ、心配して損したじゃねえか!」

「ごめんって」

「じゃあ名前くらい教えてくれても良いんじゃね?」

「でも健太郎しゃべりそうだし・・・」

さっきの津永ので大概こりたぞ俺は。

「あ、あれは口止めされてなかったし・・・」

しょんぼり肩を落とす健太郎。
正直周囲からの視線が痛い。俺ってばいじめっ子みたいじゃんか!

「分かった言う!!俺の彼氏は、く――」


「結城」


「はぇ?」

「それと鈴木も居るじゃねえか・・・てめえら、」

後ろを振り返った。健太郎も俺の肩越しにそっちを見る。

そこには、怒鳴る直前と思われる担任、ウッチーがいた。

「殺されてえのか!!」

「ひいっ!!」

ちょっ、えっ、目が「や」の付くお方そっくりなんですけど!




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