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平凡くんの秘密の恋




「俺に聞けば良いだろ」

嬉しさを笑顔で表わした俺は、右から聞こえる不機嫌な声にその表情のままで固まった。

あ、津永くんは俺とクラスメートじゃなくて、ふかーい仲になりたいわけですか。

「津永くんは黙っててくんない?」

健太郎が俺と津永の間に割って入ってきた。この口振りは、わざとくん付けしてるんだと思う。
俺の目線はちょうど、健太郎のスマートな黒髪でいっぱいになった。

「は?つーか何でお前だよ」

「うっせー。ジローと俺は同じベッドで抱き合って寝た仲なんだよ。なー?」

津永は「は!?」と声まで出して驚いた。
ちなみにまだ教室の前方で残っていたクラスメートまで俺らを物珍しそうに眺める。帰ろうとしてたのに鞄を置いた。

「何だよそれー」

「俺もよせてよせてー」

「本当だもんなー。な?ジロー?」

「え・・・」

言われてそんなことあったっけかと首をひねる。そしたら確かに、一昨日じゃれた後でそのまま寝たという記憶はあった。

「うーんまあ・・・」

「うっそマジー!?」

集まってきた3人のクラスメートのうち一人が健太郎の肩に肘を置いてうりうりと耳の辺りを小突く。

なんだか仲良さげだ。

「んだよ、ゲイじゃねえとか言ってたくせによー」

「入ったばかりだろお前。どうやってノンケの健太郎落としたわけ」

「やっぱりテク?教えてほしーなー」

眼鏡を掛けた1人はずっと無表情なのに他の2人はにやにや。

クラスメートの仲の良さに気後れして、ちょっと身を引いてたら、後ろに居た津永に当たって衝撃が来て、ちょい驚いた。
ごめんと謝るつもりで見上げたら、初対面で見た気の良い笑顔の消え失せた、険しい表情があった。視線は俺じゃなかったからビクッとせずに済んだけど・・・怖い。

「っせーよ。・・・それより、ジロー、お前俺の事避けてるだろ」

「だから!離れろ真人!」

「だ、だって・・・」

美形さんだし・・・

そう言おうと思って口を開いたけど、またすぐに閉じた。

津永の視線がぐっと鋭くなったから。


「露骨に避けられると、傷付く」

「・・・」

そう言った津永は、怖いはずなのに、少し悲しげで、さびしくて・・・、胸の奥がツキンと傷んだ。

「ごめん・・・俺でよかったら仲良くして」

人ってこんなに簡単に傷付くんだな。そして傷付けた本体も同じくらい辛い。

俺ってちょー酷いやつ。
自分は平凡だって、容姿で判断されるの嫌がってるくせに、美形の津永には容姿見て避けるなんて。

なんて自分勝手なんだ。

「良かった」

その言葉が優しくて、思わず顔を上げた俺は、

「・・・」

後悔した。

「これからよろしくな」

そのかっこ良すぎる笑顔に。

「よ、よろしく・・・」

惨めな自分の顔に負い目を感じ、笑っていいものかと躊躇った挙句、苦笑いになってしまった。




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