平凡くんの秘密の恋
2
「あいつは無自覚ドSだ」
「は?」
何その新ジャンル。開拓しちゃった?
「もともと気に入らねえ人間イジメが趣味の、いけすかねえ野郎なんだ・・・」
津永って意外にダークキャラ?
なんて、未だに腕を組みながら眉間を寄せるその姿に思った。
「でも、気に入った人間まで気付けずに虐めてしまう」
「・・・何それ。ただのガキ?」
津永「まあな」と言って、俺の言葉に口端を引き上げ意地悪い笑みを浮かべた。
「でも、権力があるからややこしい。近付かないに限る」
「はーい」
何だかんだ津永とたくさんお話ししちゃってる俺。
だって、左隣の窓側の子は、こっちを見向きもしないで窓の外のお空ばっかり見てる。
せっかく俺と同じくらい背が低いのに・・・。
でもかなりの可愛い子ちゃん。だと思う。憂鬱に肘をつく腕。その紺色のブレザーから出る手が、頬が、貧血なんじゃないかってくらい真白。髪の毛はそれと対照的に漆黒で、女性のボブのようにふんわりしてる。
このパターンは・・・
今月のおとめ座は金運がイマイチ!恋愛運は・・・週末がキーポイント。
しかーし!美形運が日々高まるでしょう。
だ。
『お前らー、去年から徐々に併設されてきた校舎は知ってるよなー』
知らなーい。
『そこが今回のポイントだ』
「ムラマサさま・・・」
唐突に聞こえた恍惚とした呟き。
それは明らかにクラス内のどこかからで、俺はまさかこのクラスにも!?と、一番後ろの席から反射的にクラス中を見渡した。
そこでまたフォローを入れてくれる津永。
「安心しろ。ここのクラスには親衛隊は居ねえ。パンピーはそれを約束に、俺らみたいな親衛隊が居るやつは、親衛隊を完全に制御するのを約束にこのDクラスに入ってんだからな」
親衛隊の名を聞いた瞬間、左隣がビクッと振れた気がした。
「ただ、生徒会みたいなカリスマ性に憧れてるやつも居る。・・・それだけだ。だから醜い嫉妬も無え」
「すごい安心した・・・」
津永って面倒見が良くて本当に良いやつだな。
安堵の溜息を胸を押さえてする俺を見て、津永はただ微笑んでいた。
そう言えば・・・
「副会長の名前ってムラマサっていうの?かっこ良いな」
「あー、本名は元村真実(モトムラ マサミ)」
もとむらまさみ・・・もと むらまさ み。
なるほど。あだ名みたいなもん?
『よーし言うぞー?集中しろ』
副会長の声がセクシー過ぎて集中できませーん。
『うちの学園は、南校と合併することになった』
――ええぇぇぇぇぇ!!?
有り得ない事に、全校生徒の叫びで学園全体が揺れた。
それは、歓喜の叫びじゃない。
これから起こる災厄を喚起させる叫びだった。
ちなみに俺は、何のことかさっぱり分からない。
俺も一緒に叫んでみた方が良いんだろうか。
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