平凡くんの秘密の恋
セクシー副会長
『これより、第37回、春の始業式を始める』
春の運動会みたいな言い方だ。なんてつっこむ余裕もなかった。
放送が始まった途端、ぎぃやぁぁぁぁあ!!と叫び声というか雄たけびのようなものが聞こえたから。
「え、なに地震か!?」
「はは、違う。他の階のやつらが副会長サマの声に興奮して声上げてんだよ」
『相変わらずうるせー・・・』
津永の言葉に何故かと疑問が浮かんだけど、すぐにそれは間違いだと気付いた。
顔も名前も背丈も、趣向さえ知らない副会長サマ。
でもその声は、
『俺はだりーんだ。お前らしっかりついてこーい』
芯が疼くほど、セクシーな低音のボイス。
言葉の通りだるそうに言うんだけど、それがまたセクシーさを引き出しているみたいで。たまらない。
「っ、この人・・・なに」
「ん?・・・おい、お前、」
どうしても疼いて仕方ない身体を、腕を抱いて抑え込む。会いたい。この人の瞳に映りたい。その声で名前を呼んでほしい。そんな欲求が湧き出て止まらない。
「初めてあの声聞いたらそうなるのかもな」
津永は俺を見て軽蔑するでもなくそう言ってくれた。
「ただ、」
そして、安心して少し笑った俺に、爆弾発言。
「アイツは生徒会一タチ悪りい。絶対ェ近付くんじゃねえぞ」
・・・絶っっっ対会うもんか。
『まずー、昨日も言ったけど、新入生の諸君、入学おめでとう。今年の外部生は14人だから仲良くしてあげろ。まずはここの習慣に慣れるようにな』
どこからか分からないけど「はーい」って聞こえた。
こんなイイ声なのにいったいぜんたいどんな欠点が・・・
何て言ったら良いのか見当もつかず曖昧に笑う俺に、津永は誰かを憐れむように眉尻を垂れて笑った。
「あいつは・・・」
『これは重大な発表だ。心して聞け』
副会長が話す度に起こっていた歓声が止んだ。
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