平凡くんの秘密の恋
2
教室は二階にあった。
一階は一年。二階は二年。三階は三年という安易な設計なのかと思えば、そんな単純じゃなかった。
そもそも五階まである校舎は、
五階を生徒会が、四階をAクラスが独占しているらしい。ちなみに四階には食堂もある。
階段で行く俺たちにとっては軽いいじめだ。
三階はBCクラスがあるらしい。
じゃあ俺らDは・・・二階独占!?
「んなわけねえだろ。どんだけ待遇されてんだ」
ぶつぶつと独り言だったのに、隣を歩く担任にたしなめられた。
「ま、前年まではそうだったがな。弱者にせめてもの労わりをってことでそうなっていたが・・・」
担任は顎ひげを擦りながら眉間に皺を寄せ、何やら神妙な顔つきで呟くように言った。
ただならぬ雰囲気に慌てて喉に溜まった唾を嚥下する。
「いや、ここでお前だけにってのも癪だし、後でクラスメートと一緒に聞け」
「皆も知らないんですか・・・」
「うすうす感づいてるとは思うがな・・・んなことより、」
うおっ、いてえ!
「テメエは自己紹介考えとけよ。俺から言う事は一つ。意地でもクラスに馴染め。問題は起こすな、目立つな。騒ぐな。木になれ」
一つじゃねええぇぇぇ!!
つーか木になれって!木になれって・・・。
雄也が言うには、俺の頭はちょうど良い位置にあって撫で易いらしい。身長的に。
何故そんな事を言うのかと言えば、担任まで俺を撫で回したからだ。がしがし強めに。おかげで髪が乱れた。
「ここだ」
「・・・・」
「なーに緊張してんだ。さっきまでの威勢はどうしたクソチビ」
「くっ!・・・急に、緊張してきて」
担任の言葉に言い返せないほど心臓が激しく動いて。
いつも生きるために動いているそいつの所為で、俺は死にそうなほどふらふらしてきた。
「まー、あれよ」
まだしっかり整えられてない俺の黒い髪に触れて、担任は何か言いたげに黙った。何だ?と思い顔を上げたと同時に言われる。
「あと2年しか無え高校生活、満喫しろよ。ウチのクラスは申し分無えほど阿呆だぜ」
それだけ言って、担任はクラスに入っていった。
「おーらお前ら席着けー!」
「はよー!ウッチー!今年もよろしくぴょん」
「それは新年の挨拶だろーが」
「今日もおっさんくせえな!」
「ひげ剃れって言ったのに全然変わってねえじゃん!」
「るせえクソガキども!テメエらのアドバイスで俺が動くと思ったら大間違いだ!」
なんか、なんか、イイ。
俺やっていけそうだ。
担任・・・(やっぱり)ウッチーは何だかんだ言ってこのクラスの皆の事が好きなんだ。
そう思ったら、まだ会ったことも無いクラスメートのことを誇らしく思ってしまった。
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