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平凡くんの秘密の恋



教室は二階にあった。

一階は一年。二階は二年。三階は三年という安易な設計なのかと思えば、そんな単純じゃなかった。

そもそも五階まである校舎は、
五階を生徒会が、四階をAクラスが独占しているらしい。ちなみに四階には食堂もある。
階段で行く俺たちにとっては軽いいじめだ。

三階はBCクラスがあるらしい。

じゃあ俺らDは・・・二階独占!?


「んなわけねえだろ。どんだけ待遇されてんだ」

ぶつぶつと独り言だったのに、隣を歩く担任にたしなめられた。

「ま、前年まではそうだったがな。弱者にせめてもの労わりをってことでそうなっていたが・・・」

担任は顎ひげを擦りながら眉間に皺を寄せ、何やら神妙な顔つきで呟くように言った。
ただならぬ雰囲気に慌てて喉に溜まった唾を嚥下する。

「いや、ここでお前だけにってのも癪だし、後でクラスメートと一緒に聞け」

「皆も知らないんですか・・・」

「うすうす感づいてるとは思うがな・・・んなことより、」

うおっ、いてえ!

「テメエは自己紹介考えとけよ。俺から言う事は一つ。意地でもクラスに馴染め。問題は起こすな、目立つな。騒ぐな。木になれ」


一つじゃねええぇぇぇ!!
つーか木になれって!木になれって・・・。


雄也が言うには、俺の頭はちょうど良い位置にあって撫で易いらしい。身長的に。
何故そんな事を言うのかと言えば、担任まで俺を撫で回したからだ。がしがし強めに。おかげで髪が乱れた。

「ここだ」

「・・・・」

「なーに緊張してんだ。さっきまでの威勢はどうしたクソチビ」

「くっ!・・・急に、緊張してきて」

担任の言葉に言い返せないほど心臓が激しく動いて。
いつも生きるために動いているそいつの所為で、俺は死にそうなほどふらふらしてきた。

「まー、あれよ」

まだしっかり整えられてない俺の黒い髪に触れて、担任は何か言いたげに黙った。何だ?と思い顔を上げたと同時に言われる。

「あと2年しか無え高校生活、満喫しろよ。ウチのクラスは申し分無えほど阿呆だぜ」

それだけ言って、担任はクラスに入っていった。

「おーらお前ら席着けー!」

「はよー!ウッチー!今年もよろしくぴょん」

「それは新年の挨拶だろーが」

「今日もおっさんくせえな!」

「ひげ剃れって言ったのに全然変わってねえじゃん!」

「るせえクソガキども!テメエらのアドバイスで俺が動くと思ったら大間違いだ!」

なんか、なんか、イイ。
俺やっていけそうだ。

担任・・・(やっぱり)ウッチーは何だかんだ言ってこのクラスの皆の事が好きなんだ。

そう思ったら、まだ会ったことも無いクラスメートのことを誇らしく思ってしまった。




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