平凡くんの秘密の恋
指令:クラスに馴染め
俺は、誰かに見られる前に離れたかった。ミツから。
でもミツも同じく職員室に呼ばれていたらしい。あえなく連れていかれた俺だった。
ミツの、キラキラ子犬みたいな純粋な目攻撃に堪える術を見つけなくては・・・、俺に明日は無い。
「すいやせーん」
「そんなラーメン屋に入るみたいな言い方・・・」
「だ、だまらっしゃい!」
そう指摘されれば確かにそうかも・・・
「新崎くん、こっちだよ」
「じゃあ先輩、これで」
ミツの担任と思しき人は、白衣を着て椅子に座っていて、なんとなくぼんやり理数系の先生かなーと思った。
思っていたら、去り際ミツが耳に唇を寄せてきて、
「久しぶりに先輩に会えて嬉しかったです」だもんなー。
ほんっと、男前って何やっても絵になって羨ましいったらねえなあ。てやんでい、こんちきしょう。べらぼう――
「おい結城、こっちだ」
「あ、はい」
独り言を遮るとは、なかなかムカつく担任だ。
ミツの担任より奥側にあった俺の担任の机まで、足を動かした。慣れない制服のせいで多少動きにくい。
教師用の、背もたれがやけにしなる例の椅子に、王様かってくらい偉そうに体重を預けて座る俺の担任。・・・え、こんなのが担任?
「おい、今失礼なこと思ったろ・・・」
「えー、まさかー」
一昨日のアッキーといい、なんで皆こんなに人の心を読むのが上手いんだろう。
「俺は2−Dの担任。内田輝之(ウチダ テルユキ)だ。古典担当。まー、ぼちぼちよろしくな」
「ぼちぼち、ですか・・・」
この人たぶん、ウッチー・・・っぽい。
ま、そんなことは置いといて。古典をめんどう見てくれるらしい内田先生は、だらけ教師らしい。
偉そうに見えたのは、だらっと体重を預けていたから。
だらだらした俺の担任は、少し曲がりくねった肩までの金髪をちょびっと後ろで結っていた。
不精ひげがおっさんっぽいんだけど、顔は若く見えるし、どうやら実年齢は若いらしい。そして白衣。
「やっぱ履歴書で見た通りの平凡具合だな」
俺を品定めでもするような目。
はは、もう怒る気もせんわ。
「ま、問題児じゃなけりゃ何でも良いんだよ。俺はな」
とんだ俺様じゃねえかこの人。
俺と担任がこんな風に面白おかしく話していたら、会話を裂くように始業のチャイムが鳴った。
「おーっと、もうこんな時間か」
やっと立ち上がった担任は、俺の背を遙かに超越していて、
「お前ちっさ!」
こんな酷いことを言う担任は、裕に180手前はありそうだ。
グスン。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!