平凡くんの秘密の恋
我が花嫁よ
「んじゃ先行くぜー」
「おう、また後で」
玄関先で駆け足で去る同室者と別れ、1人ゆったりとした歩調で歩き出す。遅刻ギリギリの時間とあってか、周囲にはまばらにしか生徒がいない。
一昨日入寮した俺は、1日ビハインドを置いて今日学校初日だ。昨日は入学式だったらしく、2・3年は休みだった。
そして俺は、昨日アッキーから来たメールにより管理人のお部屋に寄ることに。
もちろん、お待ちかねカードキーだ。
その後職員室で担任と待ち合わせ。
連絡くれたのがアッキーの方で良かったー・・・
「すいませえん」
窓口には人の影すら居ない。
アッキーまだ寝てんのか?
「すいませえん」
「ふぁーい」
奥からなんか出てきた。
なんか・・・見ちゃいけないものが見えちゃった。
いや、見てないぞうっ。俺は断じてアッキー以外認めない。
「アッキーいませんかぁ?」
出てきた得体の知れないものを完全に無視して中に問い掛ける。
「俺っち居るよー・・・?」
・・・反応ナシ。
「なーんだ。留守か。アッキーったら照れ屋さん」
「えっ、ちょっ、無視い?ねえ無視なのー?」
「カードキーは帰りで良いや」
ははは。いやー、アッキーに会うためならなんでもしちゃう俺。おっとめー。
――ガシッ
「どっこ行っくのー?」
「え?へへっ。俺真面目だからー職員室に――」
「ふーん。これ欲しいんじゃないのー?結城ジローくん?」
「・・・・はい」
いつの間にか出てきていた金髪の綺麗な人が掲げたそこには、俺ビジョンを通すと金ピカに光って見えるカードキーが。
「ひっどいなー。俺無視されて傷ついちゃったなー」
「す、すいません・・・」
いいか俺。顔上げるなよ俺。顔見られたら死ぬぞ。いやむしろもうここで一重に殺していただいても良いですけどねえ。ええもうそれが楽で一番――・・・
「あれー?ゆーふぉーだー」
ゆ、ゆーふぉー?
通称、未確認飛行物体ですか?いやいや、こんな朝っぱらからそんなもん飛んでるはずがない。
「ゆーふぉーだー。初めて見たー」
うっ。くっ。耐えろ俺。振り向くな俺。大丈夫。まだ大丈・・・
「あ、やだ消えそー」
「やだ!」
バッ。・・・バッと振り向いちゃった。てへっ。
「・・・ジローくん」
猫なで声だけど耳に心地良い。
そんな声で囁かれるからたまったもんじゃない。しかも後ろから抱き締められて、上から覗き込まれ耳元で。
「好き・・・」
――ドキッ
「は、い・・・?」
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