平凡くんの秘密の恋 着信アリ ホラーだ。 え、ホラーだ。 何度見てもホラーだ。 これ、本当に俺のケイタイだよな? うん。ちゃんとさっきミツとアッキー(うつった)と赤外線したケイタイだ。 「・・・これを無かったことにするには・・・逆パカ?」 パカっといっちゃう? ごっめーん。見ようとしたんだけどさー。俺の腕最近反抗期でさー。開けた勢いでそのままへし折っちゃったんだよね。 ・・・ダメだ。 急に部屋に泥棒が入ってきてさぁ、盗まれるか逆パカされるかどっちが良いか聞かれてー。盗まれて使われるよりましかなーって思って逆パカにしてもらったんだけどどうだろう。 ・・・なんか違う。 パカパカしてたら勢いで逆パカしちゃいました。 ・・・これだ!!! 「うわぁっ!」 これだと閃いた瞬間、光りだしたケイタイ。画面にはさっきから着信が入っているお方。反射的に通話ボタンを押してしまった。 言い訳考えた意味無いじゃん。俺のバカ。 『次郎・・・』 低い、かすれた声。心の底から何かが溢れるような感覚にぞくりとした。 「ゆ、雄也?」 『浮気か』 「は?」 『浮気かって聞いてんだろ』 抑揚の無い声。これは雄也が怒る時の特徴だ。まるでどうでも良いかのように吐き捨てる言い方。 「何言ってんだよ。女は無理だって知ってるだろ?」 この場合、一つ一つ、雄也を納得させながら話を進めなくちゃならない。 『じゃあ男か』 「違いますー」 確かに周り男だらけになっちゃいましたけど! 「俺の恋人は雄也だろ?雄也以外となんて考えられねえよ」 『でも電話に出なかった』 人の気も知らないで・・・こっちは今日1日たいへんだったんだぞ!とは言えない。 学校は明日からだって言ってあったから。 「親に付き合って買い物行ってたんだって。どう?俺孝行むす――」 『俺より親を取んのか』 ええーっ。 そんなー。 「た、たまに・・・?」 『・・・』 えっ、なにその無言。 電話なんだから喋ってくれないと分かんないですよ? 「雄也ぁー?」 『・・・』 「ゆうくーん」 『・・・』 「ゆうやーん」 『・・・』 「ゆうゆう?」 『・・・』 てめえ何か喋れっつってんだボケぇぇぇ!! 「はぁ・・・それで、何で電話したの」 『・・・そ、れは、』 ん?電話の向こうで雄也がいきなり慌てだした。 あの、その、うん、えっと。 って口ごもる。 「まさか、声聞きたかったから、とか?」 これは照れてるんだな!と思った俺は問うた。 でも返事は無い。 「あ、」 俺のバカ。早とちり。 「ごめん。図々しいよな・・・調子乗りました」 『・・・・――かよ』 「え?」 ごめんなさい。おばあちゃんのお耳には今のじゃ聞こえないわ。 『声聞きたくて電話しちゃぁ悪りいのかよ!』 「・・・ゆー、や」 キュン死にーっ! な、な、な、何今の!キュンってきたよ!パねえキュンってきたよ! ヤバいかっこいいんですけど俺の彼氏!!(お忘れなく) 感動していた俺は、耳元で囁かれた言葉で、顔から一気に色が消えた。 『・・・今週末、寝かせねえから』 と、泊まり強制!? 「ちょっ、雄也!」 切れた・・・ 外泊届けってどうやって出せば良いんだ? [*前へ][次へ#] |