平凡くんの秘密の恋
2
「そうだよな。健太郎たちは1年からの付き合いだし」
その辺のブランクは埋められないし。ってか、埋めようとも思わないんだけど。
健太郎を送り届けながら、部屋に戻る前にコンビニに立ち寄ることに決めた。一々戻るのも面倒だったし。
俺(とミフネ)の部屋からコンビニに行くには、絶対に健太郎(と津永)の部屋の前を通らないといけない。部屋に入った健太郎をやり過ごし、なんとか本来の目的地に歩を進めることができた。けっこう有名人になってしまった俺に「あれ、姫と一緒じゃなくていいの?」とか言ってくるやつがいたけども、大丈夫だと言ってやった。
だからさ、まだ健太郎が狙われてるんだから俺は大丈夫なんだって。ミフネがあんなに頑張って俺についてくるのが悪い。・・・・・たぶん。
「今日は麺系な気分だな。パスタとかいってみるか」
すっかり常連になってしまったコンビニにて。奥の弁当が並ぶコーナーで居座ること約20分。ミフネの分も弁当を買ってぶらぶら下げながら歩いていると、自販機のコーナーに差し掛かった。自販機の近くは少し開けていて、憩いの場のようにソファと観葉植物が並べられている。手入れが大変そうだ。これもアッキーとかが世話をしてるんだろうか・・・・・いややるならアッキーじゃなくてソウだよな。
そう言えば麦茶が足りなかったような気がして足を止める。
「んー、ミフネが好きなのは・・・・・」
ミフネは好みがはっきりしてるから、合わせられる俺としては迷わずに買いやすい。
がこんと望みの麦茶を抱え、その場を去ろうとすると、
「・・・・・・って、・・・・・やって――!」
後ろのほうで声が聞こえた。
自販機の影で誰かが話しているみたいだ。こんな所でいったい何の話が・・・・・と好奇心がむくっと頭をもたげたが、ミフネの顔がチラつき足が根を張って俺を引き止める。あの眼鏡の奥からのえぐるような視線。
「・・・・・・帰ろ」
俺ってば偉い。
きっと覗いたとしても、俺には関係ないことだし、何も変わらなかった。のだと思えば心持ちもすっきりして良い。
その日の夜、「ちゃんと買っといたぜ!」と自慢げにコンビニの袋を見せつけた俺の頭上に、ミフネの鉄槌が振り下ろされた。
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