平凡くんの秘密の恋
平凡で良かった!
寮の3階に2年生が住まうらしい。
ミツとはケイタイの赤外線交換をした後、別々に管理人である塩見さんの所を出た。
やるなら徹底的に気を張った方が良いと言われたからだ。
カードキーは無いから暫くは同室のやつと一緒に居なきゃならない。・・・初っ端からこれで、迷惑がられないかな。
とか悩んでいる間に着いた。280号室。これが俺の部屋の番号だ。
よし。男は度胸!
――ピーンポーン。
どんなやつが出てくるんだろう。
ドキドキして仕方ない胸を押さえる。
暫くして、それほど待たずドアの鍵が開き、人が出てきた。
「まさか編入生?・・・」
そんな言葉が聞こえたが、それもすぐ消えた。俺も言葉を失う。
「・・・」
次に出た声は、2人同時だった。
「平凡で良かったー」
「平凡で良かった・・・」
失礼な!いや俺もか。
「ははっ、お前も思ったのかよー。気い合いそうだな。さ、」
平凡くんは人当たりの良さそうな笑顔で「入れよ」と通してくれた。
寮の廊下も石張りでかなり凄かったが、部屋は一部屋だけらしい。しかし一部屋だけと言ってもこれは20畳は堅いな。
ベッドと勉強机が左右対象に置かれていて、ベッドが壁際、机が窓際で、窓を向いて勉強するみたいなかんじだ。お互いの勉強机の間に、ベランダに続く窓がある。
向かって右側にダンボールが積んであるから俺は右側か。
その生活スペースの間にローテーブルと3人掛けソファがあり、システムキッチンになっていた。
「なぁ、俺鈴木健太郎(スズキ ケンタロウ)」
部屋を見るのに気をとられていたのをやめて、後ろにいた同室に笑いかけた。
「結城次郎。よろしく」
「へへっ。よろしくー。鈴木って名前多いから健太郎って呼んで」
「おう。俺は何でも良いわ」
健太郎は可もなく不可もない黒髪。背は俺より少し高い。たぶんクラスの人気者キャラだろう。
「あ、そうそう」
ソファに座った俺と、自分のベッドに座った健太郎。
あの事健太郎に言わねえと・・・
「あのさ、実は管理人の手違いで、カードキーが暫く無い状態で。出来れば行動を共にしてほしいです」
失礼な申し出に、健太郎は快く受け入れてくれた。
「もちろん!んなこと気にすんなよ」
それどけろかぐっと親指を立ててくる。
良いやつだな。
「しかし本当に平凡で良かったな!お互い」
にししと歯を見せて笑うのがクセみたいだ。本人は平凡だと言われ慣れてるみたい。俺もだけどさ。
「うん。美形だと一緒に行動すんの遠慮したいし」
苦笑しか出なかった。普通の学園生活を送れるんだろうか・・・凄い心配。
「だろー?ウチのクラス殆どそういうやつだから安心しろよ!」
「ウチのクラス?」
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